kaitoujannu

私たちが小学生の頃、一番胸をときめかせた漫画家といえば、『神風怪盗ジャンヌ』でおなじみの種村有菜です。ねとぽよ編集部は女の子文化をさらに探るべく、ありなっち大好きな女の子3人に話を聞きに行きました。

――あの頃の少女漫画とその終焉。彼女たちが夢見た戦うヒーローの姿とは。ジャンヌはエロかった!?

みんなと一緒に、懐かしのあの時にタイムスリップしませんか?

 

 

自己紹介タイム

――集まっていただき、ありがとうございます。さっそくですけど、自己紹介しましょう!

 

もぐもぐ インターネットもぐもぐです。

今回の座談会は、私が『神風怪盗ジャンヌ』について話していたら、なぜか大地さんがいつのまにか「全部読んだよ」と言い出したのがきっかけでした。「今なら、安野モヨコや岡崎京子や矢沢あいよりも、種村有菜こそが語られるべきなのに、全然語られてない」的なことを言ったら……。

 

――「じゃあやりましょう」と(笑)。たしかに種村有菜は、あの時代に取り残されてしまった少女漫画のジャンルだと思っていて。

 

もぐもぐ 読んでる人はすごい思い入れがあるはずなのに、意外とある特定の世代の前後には知られてないんですよね。小学校のときは『りぼん』ばっかり読んでたので、懐かしい話が出来ると嬉しいです。

おびわん おびわんです。小学校時代は、ちゃお派でした。近所の友だちがりぼん派だったので、回し読みしたり。種村有菜の絵を真似してイラストを描いてたりもしましたね。

もぐもぐ 89年生まれなんだよね?

おびわん はい!もぐもぐさんと一緒です。

なおりん はじめまして、なおりんです。私も当時はちゃお派でした。でも、りぼんもなかよしも読んでいて、ジャンヌは特に好きでしたね。今回は、少し下の世代として話していきます。よろしくお願いします。

 

 

種村有菜の衝撃

ちょいエロがいい!

 

――まずですね、種村有菜座談会なので、皆さんのありなっち体験を聞かせてください。

 

おびわん 私にとって、ジャンヌはセーラームーンの後釜という位置づけです。でも、少女漫画よりも少年漫画に限りなく近い存在で、男の子との恋愛を見出した記憶はあまりないんです。かっこいいバトル漫画に、たまにエロいシーンがあって……。

もぐもぐ 衝撃だったよね。りぼんの中で、初めてベッドシーンを彷彿とさせるシーンを描いてしまったんです。

おびわん “ヤる”風の顔を描いちゃう漫画は他になかった。

 

――”ヤる”風の顔!

 

おびわん ちょっと半泣きで悶えてるような顔は、小学生からするとかなり刺激的で、他の少女漫画とは違いましたね。

音比古  今5巻読んでたら、先生に迫られるシーンがあったんですけど……!(※ 座談会を横で聞きながら、種村作品を読んでいた)

ろっくまん しかも下着姿じゃないですか!エロい! (※ 同じく座談会を横で聞きながら、種村作品を読んでいた)

もぐもぐ あれは本当に、衝撃ですよ。りぼんの本誌では、そこがカラーページになっていて。今でも忘れられません、薄ピンクのアレが……。

一同 (笑)

 

華舞う絵、ありなっちへの憧れ

 

ジャンヌ2
 

 

もぐもぐ 私は、種村有菜のデビュー作が本誌に載った時に、キラキラして、華が舞っているようなイラストの可愛さに超びっくりしました。当時のりぼんだと、小花美穂とか吉住渉とかのキレイめな、お姉さん系の絵が多かったんですよね。だから、種村有菜は、絵の印象が強い。

 あと、真似したくなるんですよ。みんなで描いて、FAXとかしてました。

 

――FAX(笑)! FAXなに? 絵を描いてFAXしたの?

 

もぐもぐ ネットで知り合ったジャンヌ好きの子と盛り上がってたら、イラスト付きの手紙をFAXで送ってくれて。わたしは絵は描けないんで手書きの文字だけで返信してたんですけど。文通をFAXでしてたんです。

なおりん 友達と一緒に書いたりはしたけど、FAXは思いつかなかった(笑)

 

種村有菜の同人センス

もぐもぐ ありなっちの字を真似して、みんなで回し手紙とかしたなー。

おびわん あれって、典型的なアニヲタの女性の字ですよね。同人誌を買うと、最後のページにある作者コメントも、みんな似た字体だったし。

 

――たしかに、種村有菜は同人センスだよね。特に女の子に刺さるものを選んで、抽出している気がする。

 

もぐもぐ そうそうそう! 女の子をときめかせる決め台詞みたいなのが上手いですよね。

なおりん 当時は幼かったので、少女漫画を真に受けて、年上に憧れる時期もありました……(笑)

おびわん 小学生まではそう。でも、中学に入って少年漫画に触れて、BLとかも読んでいくと変わる。「種村有菜の良さは、柱にあるネタ的な部分にある!」って、うがった見方をしちゃうんだよね。これは女子校特有かもしれないですけど。もちろん、大好きだし憧れの存在、もはや「ありなっち神」であることは前提で。

もぐもぐ たしかに、私の周囲でも途中で「ありなっち(笑)」になった気がする。

 

 

具体的な種村有菜作品

チェックメイト!『神風怪盗ジャンヌ』

――種村有菜といえば、やっぱり…

 

なおりん ジャンヌですよね! リアルタイムで読んでたし、一番思い入れがあります。とにかく絵が可愛くて。

もぐもぐ ありなっちの描く衣装って、本当に全部可愛くて。布のひらっとする感じも繊細で、すごい上手いんですよ。自分の好きなものを全力で描いてるんだなっていうのが伝わってきて、読んでてすごい気分よい。

おびわん 突き抜けてる感じが、子供ながらに分かりますよね。

なおりん 今はアニメとか、たとえばプリキュアとかで強くて可愛い女の子ってよく見るけど、当時はそんなヒーローが少なかった気もするんですよねー。セーラームーンも終わってたし。チェックメイトする姿も、みんなを幸せにできるのもかっこよかったなー。

 

少女漫画の影響

――具体的に、種村有菜からすごい影響受けたことって何かあります? もぐもぐはよく言ってるけど……。

 

もぐもぐ 種村有菜でこじらせた話は何回もいろんなところでしていて。本人にも届いたのは、嬉しかったですね……恥ずかしかったですけど!!

 

 

おびわん 私はジャンヌ以降、ほとんど少女漫画を読まなくなりました。例えば『君に届け』とか『僕らがいた』とか、ぼんやりした日常の中で、男の子に恋して、最後は結ばれるような少女漫画は、オチが予測できてしまうし、全然共感できないのでハマりませんでした。

私の中でジャンヌは完全にファンタジーで、恋愛とは切り離されたバトル漫画。なのに、女の子たちは恋愛漫画よりも可愛い、このギャップが魅力なんです。そういう風に自分なりに解釈できる余地があるところが好きだった。少女マンガ的な恋愛って有り得ない、というか自分とは別の世界のものだから。とにかく、自分以外の女が幸せになる作品は何が良いんだかわからない(笑)。だから少年ジャンプとかは好きな男キャラとヒロインが結ばれないから安心して読めるんですよ。

 

――ここがおびわんともぐもぐの差で。バトルものだからおまけ程度と思ってるおびわんに対して、バトルものよりは少女漫画としてちゃんと読んだのが、もぐもぐだと思う。もぐもぐからすると、ジャンヌみたいに優れた女の子だから幸せになるべき、なんだよね?

 

もぐもぐ そうです。「かっこよくてかわいくて最高!こんなスーパーガールのまろんちゃんは、幸せになってしかるべき存在!」と思ったので全力で応援してました。読者の共感を呼ぶタイプの主人公の話も嫌いではないけど、没頭はできなかったです。アイドルを推す感じに近いかもしれない。

 

“ヤンキーシンデレラ” 『紳士同盟☨』

おびわん 『紳士同盟☨』は一番好きかも。三回ぐらい泣いたし……。

もぐもぐ 『紳士同盟☨』は、タイトルに☨を入れちゃったところがヤバい。

 

――あの☨って何なのかな?

 

おびわん いろんなカップリングのことだと思う。女同士も男同士も、友情も恋愛も、みんな紳士的な関わりでクロスしてるってことだと思う。

もぐもぐ キャラクターもあんなにたくさん出てくるのに。

おびわん それでもまとまるのは、すごい。

もぐもぐ 最終的に二人と結婚するのは、かなり衝撃的だったんだけど……。みんなはどう?

おびわん 閑雅様は二次的な存在でしかなくて、高成様と結ばれるかと思ったけど。ありなっち、平和主義者だから、最後は「だめだよ、みんなで結婚しよう」で終わった(笑)

もぐもぐ たしかに、おとぎ話感で押し切られた感ある。

 

――主人公がヤンキーなのは、女の子的にどうだったの?

 

なおりん 種村有菜の主人公は強いのがお決まりじゃないですか。まろんちゃんはジャンヌの強さがあるし、満月も歌が上手かったり、その流れで灰音のヤンキーは、自然と受け入れられたかも。

おびわん 私はすごい好感がありました。コンビニの前に座ったり、窓から飛び出して外で暴れて帰ってきたりする、ヤンキーに対するありなっちの間違ったイメージ(笑) でも、主人公が元から完成しきってないのはよかった。

 

りぼんでの集大成、『桜姫華伝』

もぐもぐ 『桜姫華伝』は、「種村有菜会やるよー!」って言われてから一気に読んだんですけど、思ったよりずっと面白くてちょっと感動しちゃった。

おびわん いつものテンプレに見えるけど、すごい進化してますよね。

普通の少女漫画だったら主人公とその相手とライバルの3人で三角関係になるけど、ありなっちの場合、本当に全部のキャラが好きすぎて、全員に同じことをさせちゃうテンプレ展開。人間関係複雑すぎるのに、最後はまとまるんだよねー。

 

――それにしても桜姫は、異様に三角関係多かった(笑)

 

おびわん そこも、ありなっち特有の、厚みを持たせる戦略な気がする。カエルがキスされるシーンとか好き。

もぐもぐ ありなっちの描く女の子が可愛すぎて、何でも許せちゃうところあるなー。

 

――この作品で改めて、種村有菜は進化し続けてると思った。もうすぐ最終回(12月1日発売号で完結)だけど、どんな終わり方になるんだろうね。

 

なおりん いつものありなっちと一緒で、きっとみんなが幸せになるんだろうなーと思う。全然展開読めないから、すごい期待してます。

おびわん 女の子の強さと弱さが、いい具合に周囲の人間と関わり合う中で表現されて終わると思う。キャラ単体の魅力だけじゃなくて、関係の網の目の中でそれぞれの良さが完成するラストというイメージ。

もぐもぐ うーん、どうだろう、紳士同盟もどんでん返しすぎるラストだったからな…(笑)。今回は生死とか輪廻とかがテーマとして大きい気がするので、まどマギみたいに宇宙規模なラストっていうのも……。あとはキャラクター個々にどういう結末を与えるかも気になります。さっきも言いましたけど三角関係が多すぎて!

集英社のまわしものみたいですけど、ちょうど完結したところだし、久しく種村有菜作品とか読んでないな~って人に読んでもらいたいです。自分の中の何かが蘇る感じがある!

 

 

少女漫画とこじらせ

少女漫画がエロくなっていく…

もぐもぐ 最近は、エロと少女漫画の癒着が非常に強いのは悲しい。

 

――あれ? ありなっちのちょいエロは、むしろいいんじゃなかったの?

 

おびわん 具体的な描写は、ないんですよ。顔だけで表現してたりして。

もぐもぐ ありなっちは、「エロいから好き」っていうわけじゃない。でも、少女コミック系だとエロいことが重要な要素になってて。ありなっちは物語がしっかりしてる上で、そういうシーンが出てくるから、逆にドキドキするんですよねー。

おびわん エロが読みたいんだったら、もう少女漫画は読まないもんね。BLとか他のジャンルで、同じようなものあるし。少女漫画をあえて読む必要性がなくなってきてる……。

 

中学生からは、BLに進む

もぐもぐ おびちゃんは中学のとき、漫画はジャンプ?

おびわん はい。父の影響で、ジャンプ系の漫画を読みました。腐の子たちと仲良くて、『アイシールド21』の18禁同人イベントに、お台場まで行ってました。黒歴史だけど(笑)、やっぱり良い経験だから抹殺したくないし、誇れる。

もぐもぐ 女子校ってそうなるよねー。

おびわん 好きな同人作家さんとかもいたけど……ただキャラクターが好きなだけで、ホモ好きじゃないことに気づいて、離れたんですよね。私たちは、疑似体験として、キャラクターに自分を重ねることと、客観的に関係性を見出して萌えることの2つを、うまく使い分けて消費してた層なんだと思った。

 

――それって、BLと夢小説の違いに近いと思うんですね。自分を投影しちゃうのがドリームで、そこから逃げるのがBL。君たちの世代がそれを選べたのは、本当だと思う。でも、これより下の世代はもう選べないんですよね。なぜなら、ドリームが死んで、BLしかなくなってしまったから。

 

なおりん 私の世代では、もう少女漫画を読んでる子はいませんでしたね。漫画といえば、ジャンプのイメージが強い。

もぐもぐ そこ不思議だよねー。中学に入ってから、みんな少女漫画を読まなくなる時期あった。

なおりん 今高1の妹がいるんですけど、彼女の世代になると、私が少女漫画を読んでた時期にはもうファッション誌を読んでましたし。漫画といえば、少女漫画よりは、ジャンプ系の腐女子らしいですね。

おびわん でも、自分が恋愛うまくいかなくなった頃に、みんなが読んでた少女漫画読んどけばよかった、って後悔したなー(笑)

 

――それは少女漫画というジャンルの衰退な気がするなー。少女漫画は種村有菜で終わってしまった感覚とかある?

 

なおりん・おびわん ある。

もぐもぐ 単にBLに乗っかってなかったってこともありますけど、私はそのあとも結構読んでました。別冊マーガレットがわりと好きだったかなあ。『ラブ★コン』とか『CRAZY FOR YOU』とか。でも本誌を買うことはもうなくて単行本でしたね。でも明らかに周りは読む人口減ってた気がします。『NANA』くらいじゃないか、最大公約数的に話題に出せた漫画って。

 

少女漫画にはリアルがなかった

――少女漫画から離れていったのはなんでなの? 大人になりたいから?

 

おびわん ギャルの子はファッション誌を読むし、オタクは少年漫画に行くし。自分がセレクトしていく中で、少女漫画が淘汰されていった印象はあります。

もぐもぐ そうそう。マジで恋がしたいなら漫画なんか読んでる場合じゃねえ!かわいい服を着なきゃ!って気付いてしまった(笑)。二次創作のしやすさも大切だよね。『NANA』くらい突き抜けたビジュアルだとコスプレとかも可能かもしれないけど、作者の世界観が大事だし、関係性もわりと固定されてるからカップリングって発想もあんまりないよね。スピンオフ小説みたいなのはあったかな。

あとは、これは個人的な経験なんですけど、私立の中学に入って電車通学になると、遠くに住む友達が増えたんですよね。そのせいで、友達の家で回し読みする文化はなくなっちゃった。休みの日に、一緒に遊ぶきっかけを作るために、「セブンティーンに載ってたお店に行こう」とか、「『テニスの王子様』のグッズをアニメイト池袋店に買いに行こう」とか言ってた気がする。でも、りぼんは店がなかったんですよ、行く場所がない。

 

――これはちょっと面白い。少女漫画はリアルに行く場所がなかった、と。

 

もぐもぐ 聖地巡礼できなかった。少女漫画はその世界に閉じちゃってたな……。漫画の外で盛り上がるための、話題に出すためのフックがないんですよね。家と学校しかなかった小学生の頃より広がりたいのに、少女漫画はそれにうまく合わせて世界観が広がってない気はします。レディコミになっちゃうと不倫とかセックスばっかりでそれもなんか違うし(笑)。

 

――少女漫画から少し離れて、夢のない世界に生きてきた女の子たちも、久しぶりに種村有菜を読むと、やっぱり幸せになれるんですね。

 

おびわん ありなっちなら、いつでも読める。安心するなー。

もぐもぐ 私はわりとずっと少女漫画好きですけど、あの人のセンスだけは卓越してますよね。

なおりん  種村有菜が私たちの世代に、すごい影響を与えたことは間違いないと思います。

 

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まだまだ話は止まりません!

懐かしの種村有菜以降の少女漫画と、これからのありなっちへ思いを馳せる。「戦闘美少女になりたい」彼女たちのありなっち座談会は、後半に続く!

※後編はこちら
 
 
 
 

上の三人も制作に参加している『ねとぽよ 女の子ウェブ号』は、ねとぽよショップで発売中です。種村有菜直撃世代の女の子で、ネットが好きだった方には、きっと楽しんでいただけると思います。

 

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