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 一年ぶりに開かれた今回のイベントには、前回を上回る100人以上が詰め掛けた

 

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会場の外では、向かいの通りまで来場者が並んでいた

 

 立ち見を出さないようスタッフが後方のお客さんに椅子を出す中、昨年同様に「朝ナマ」のジングルが流れ、登壇者が入場した。前回から引き続いての登壇(“ソシャゲは若いクリエイターのフロンティア” 朝までソシャゲを語り尽くしたあの夜をレポート!! 〜ねとぽよpresents!朝まで生ソシャゲ@ロフトプラスワン! POYO NET- ねとぽよ)となったエンタースフィア代表・岡本基氏は、「毎月ソシャゲに使うお金が倍々に増えていて……今月はまだ20万いってないかな」と会場をどよめかせ、「今回はパズドラの次は何かを見つけたい」と抱負を述べた。

 

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 続いてGiGi氏が登場。「去年はユーザー代表として登壇させて頂きましたが、その間に色々あって……今回は中の人として参加します」と華麗な転身(当日は、TwitterなどでGiGiインタビュー 36歳無職・ゲーム/IT業界未経験者が、人気タイトルの企画屋に転身するまで POYO NET – ねとぽよが話題になっている最中だった)を明かした。「新作ソシャゲを一日一本は遊ぶよう心がけている」という彼は、「面白いゲームだけが面白いわけじゃないです。パズドラパズドラと言われているので、パズドラ以外のことが話せれば」と心強いコメントを語った。

 

 第一部の冒頭では、司会の斉藤大地が、議論を始めるにあたって、去年4月以降のソシャゲ界隈をハイスピードで振り返るプレゼンを行った。会場に映しだされたパワーポイントで、コンプガチャショックから始まった一年の流れを確認して、適宜GiGi氏と岡本氏がコメントを加えていく。会場には業界関係者と思しき観客も多数おり、他人事ならぬ表情で聞き入っていた。

 

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 内容については、その後の議論とかぶる面もあるので、ここでは詳しくは説明しない。印象的だったのは、神撃のバハムートやモゲマスのヒット、ギルドバトルの流行などがあった2012年の前半が「拡大の時期」、「爆死するタイトルが増え始めた(岡本)」という後半が「成熟の時期」と位置づけられていたことである。 岡本氏はこの変化を、「もともと当たってなんぼの世界だったが、IP(版権物)の隆盛で開発費が高騰してしまったため」と分析していた。

 

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 また、海外との比較で、欧米や他のアジア圏で流行したソーシャルゲームをジャンル別に整理してもいた。Zyngaなどカジュアル中心だった米国で「ミッドコア」と呼ばれるコアユーザー向けのゲームの流行があったことや、元からMMO的なゲームが強く、近年ではチャットアプリに紐付いたカジュアルゲーが人気を博していた韓国で、「拡散性ミリオンアーサー」などのシンプルな日本のソシャゲが話題になり、ちょうど日本とは逆方向とも言える形でトレンドが生まれつつあることなどが確認された。

 

 問われ直すプラットフォームの役割~2012年度上半期振り返り~

 

 続いて四半期ごとにまとめられたスライドを見ながら、壇上では昨年4月からの、この一年の出来事が振り返られた。

 

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 冒頭、このイベントの直前に大幅な業績下方修正と「ラブライブ」アプリリリースで「カニカニパニック」を引き起こしたKLabが「2012年4月 業績好調、米国法人設立」と紹介され、会場からはシュールな笑いが起こった。

 しかし当然、議論の本筋は5月のコンプガチャショックに集中する。岡本氏はコンプガチャショックの影響について、「特に子供を持つ親御さんの間でイメージダウンはあった」としつつも、「課金の一手段でしかなく、たまたまわかりやすく表に出てきたものの一つに過ぎない。少なくとも大手SAPの間で大きな影響はなかった」と語った。GiGi氏は自主規制策として出てきたガチャの確率表示を「コアユーザーからすれば確率なんてガチャを回していればだいたい分かることだった」と豪語。一方でコンプガチャショック以降、「各社工夫をしないといけないという空気が出てきた」として、ポジティブな側面もあったとした。

 

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 続いてスライドが7~9月期に変わると、議論はグリーとDeNAの明暗が分かれた理由に移っていった。8月の決算発表ではDeNAが増収増益・グリーは減収減益と対照的な結果となった。

 当時、コンプガチャショックの影響も噂されていたグリーだが、壇上では俗に「グリーセット」と呼ばれるSAPへの手厚いコンサルが逆に仇となったという指摘が上がった。グリーは各SAPから吸い上げたノウハウを上手く各SAPに分配し、大規模に横展開することでソシャゲ全体の進化を加速させた。これがカード系の流行を生んだ一方で、ゲームの均質化を招いてしまったという。この指摘については、Twitter上でも反応が上がっていた。

 

 

 

 

 またGiGi氏は「GREEとMobageで同じゲームが出たときには、いつもMobageでやる。ポータルが圧倒的に使いやすい」と話し、ユーザー視点からMobageの優位性を語った。GREEではCMを打っているゲームがトップに表示されないことがあるという指摘には、観客から笑いも上がっていた。

 まとめてしまえば、両社ともに大型ヒット不在の中、SAPだけでなくユーザーの側を向いたプラットフォームであったかどうかが勝負の分かれ目となったということのようだ。

 

 「第三極」のゆくえと海外展開 ~2012年度下期振り返り~

 

 2大プラットフォームが話題をさらった上半期に対し、下半期に目立ったのはLINE、ブシモ、dゲームといった「第三のプラットフォーム」である。ともにSAPの「中の人」である登壇者二人はこうした「第三極」をどう捉えているのか。

 

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 LINEについては「ゲームタイトルをかなり厳選しており、プラットフォームとパブリッシャーの中間に近い」「数多くのタイトルを抱えてロイヤリティ収入を上げる従来のプラットフォームとは異なる」という意見が出た。一方ブシモについては「もともとはプラットフォームというより、アンチポチポチゲー・ネイティブ路線」との指摘が上がった。

 GiGi氏は、ネイティブ台頭の時代における「第三のプラットフォーム」という存在への否定的な考えを背景に、「そもそもブシモはプラットフォームなのか。ブシロードさんの強みは魅力的なIP。LINEと一緒で、ブシロードさんが持ってるIPをゲーム化するとき、”ブシモ”というブランドを使っているだけなのでは」とした。なおdゲームにいたってはその名前が出ただけで会場から笑いが起こり、暗黙のうちに話題は9~11月期に動きがあった海外展開話に移っていった。

 

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 現在、国内企業が海外展開を縮小させるだけでなく、Zynga Japan の日本撤退など、海外から日本への動きも不透明になっている状況がある。ここで面白かったのが、岡本氏の論である。海外展開はたしかに難しいが、海外ユーザーは「日本の課金手法については、概ね肯定的」なのだというのである。その背景には、海外は日本より課金手法が立ち遅れている事実があるという。

 実は欧米では、現在でもなおユーザーに障害を与えて、それを突破するために課金を迫る手法が多いそうだ。岡本氏は、そうした手法を「後ろ向きの課金」と呼ぶ一方、負の側面が強調されがちな日本のガチャを「欲しいからユーザーがどんどん課金する」という点で「前向きな課金」と呼び、「欧米でカードゲームがそのまま流行るかは分からないが、ローカライズされた上で「前向きな課金」がどんどん取り込まれるのでは」と自説を展開した。

 GiGi氏も、バハムートクローンで、マーベルのアメコミキャラクターのIPを用いた「マーベル・ウォーヒーローズ」が北米でずっと上位に入っていることを指摘。「コアなファンの付いたIPとカードゲーム系の相性の良さがここでも証明されている。きちんとローカライズされたガワをあてれば、カードゲーム系の仕組みは海外でも通用するはず」と語った。

 しかし、裏を返せば、共通の仕組みを提供することでメリットを生みだすプラットフォームにとって、ローカライズは苦手分野の一つとも言える。ノウハウの横展開・画一化という戦略の厳しさがここでも示される格好となった。ここで司会があえて「プラットフォームの価値とは何か」を登壇者に尋ねると、岡本氏は「SAPにとってプラットフォームの価値はとにかく集客」とした上で、「コンプガチャショックが起きた時、プラットフォームが矢面に立ったからこそまとまれたという側面もある」と語った。GiGi氏は「儲かってないといっても結局儲かっているじゃないですか!」と笑いを誘いつつ、「自社のコンテンツをIP化して長く遊んでもらえるよう、お金のあるうちに出口を探しているということだと思います」と述べた。

 そして話題が直近の13年1月~3月付近に移ると、プラットフォーム話が終息し、パズドラやLINEの好調が伺える出来事が続いた。パズドラを始めとするネイティブのゲームに関する話題は、第二部で再び扱われたので、ここでは詳細は省く。

 

 「ソーシャルゲームとして区切る意味がなくなってきた」~今後の展望~

 

 コンプガチャショックに始まりパズドラで終わったこの1年。振り返りが終わったのは深夜2時近くだったが、時間を感じさせない激動の12ヶ月だった。

 最後に今後の展望について聞かれると、岡本氏は「パズドラを目指すのは難しいが、ラブライブのように二位争いはまだまだ可能だし、AppStore全体の売上も伸びている。」と話す一方、「とはいえしっかり遊べるものを作らないとダメ。作り手側も従来のマネタイズ手法以外にいろんなことを覚える必要が出てきた」と作り手側の変革が必要であることを強調した。

 GiGi氏も「そもそもソーシャルゲームとして区切る意味がなくなってきた」として、イチオシの「にゃんこ大戦争」を引き合いに「ガチャがなくてもF2Pのマネタイズ方法をしっかり作りこめば、これだけ売れるということがわかった」とモバイルゲームにまだまだ発展の余地があることを示した。

 プラットフォームが前面に出る時代は終わり、よりゲーム性の高いネイティブアプリへ。オーソドックスな結論ではあるが、海外展開や第三のプラットフォームについて冷静な議論がなされたのは興味深かった。また個人的には前回との客層の変化が気になった。前回は学生を始めとしてソシャゲに興味がある程度の層だったが、今回はTwitterや会場の雰囲気を見るにソシャゲの「中の人」も相当に多かったように思う。また、前回の第一部は生放送をしており、第二部は課金の「ぶっちゃけ話」をクローズドにして展開するという、ある種ソシャゲ自体をネタとしてエンタメ化する試みだった。この客層の変化は、1年でソシャゲが持つ問題系はもはや「暴露するもの」ではなく、ゲームの未来を占う重要かつ普遍的なトピックになっていたことを実感した。

 第二部ではこのようなプラットフォーム側の変化を踏まえた上で、実際にどんなゲームが第二第三のパズドラとなるのか、さやわか氏・井上氏・ラッキーゲーム氏、さらには死に舞氏も乱入し、熱い議論が交わされた。

 

第二部編に続く

 

 

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klov

klov

ウェブメディアでリサーチ/ウェブ解析を担当。ねとぽよではライターやウェブ周りのディレクション。

GoogleやFacebookなどのプラットフォームの話題を追いつつ、日本独自のインターネットについて考えています。

 

 

▼活動履歴▼

2006年~ はてダ「No Hedge!」開設。村民となる。
2007年~ 批評系同人誌「筑波批評」に参加。Webや建築系の批評を寄稿。大二病、進行。
2011年~ 「ねとぽよ」に参加。最初はフリーペーパーにちょっと文章を書くだけだったはずが、いつのまにかウェブメディアを作っていたり。