前回の話→第一幕(八)を読む。

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わたしはどこからきたのか、

わたしは何者なのか、

わたしはどこへいくのか、

 

 

「お手上げです」

 

 

尋問されそうなことなら検討ついてるけど

そんな

自意識をえぐりだし自我と向き合いましょう的な問、わからん!

だから、犯人じゃないあたしじゃないあたしは犯人を捕まえようとしていただけで!

と繰り返し語ることしかできない。

さて、と鞠貢が呼吸を整えたら、全員が黙り込んだ。

静かなの、苦手。

裏返しのまま配られた試験用紙をじっと見つめてる時の沈黙にそっくりだ。

「恭之介は犯人じゃないよ、俺と一緒に犯人捜しをしてただけ」

 

鞠貢の後ろで、恭之介が頷く。

でも、身内に犯人がいる可能性だってある。

あたしはまだ、恭之介が犯人である説を捨てきれない。

ていうか、あたしが犯人じゃないことを示すために

もっと怪しいヤツ、でてきてくれ。

弁明も兼ねて推理を披露してやる! と意気込んで

 

恭之介の部屋に放火地点に印のついた地図があったこと、その中心付近に彼の手習い所があったことから、手習い所を開いてる寺院を襲撃したんじゃないの! と言えば

「それは調査してたからだよ。中心に自分の手習い所があることは偶然でしかない」と答えられ

 

じゃあ火事のある日に稽古場にいたと嘘をついた乱十郎、本当は何してたのさ、と問い詰めれば

彼は少しめんどくさそうに耳の裏を掻き、辰徳が冷たい目で

「髪結い所のナナちゃんとデートしてるとこ、見た」と乱十郎の代わりに答えた。

鞠貢があたしの目を見つめる。

 

「クルミちゃんが犯人だって証拠はないよ、でも、犯人じゃない証拠もない。

どうしてあそこにいたの? 俺たちと初めて会った日に、火災現場に倒れてたのはなんで?」

「それは……」

 

 

―――未来人だからです。

 

 

「「「「はぁ????」」」」

 

 

朝里ちゃん、乱十郎、恭之介、辰徳がそろって首をかしげる。

予想通りの反応に、予定通り凹む。

自分は無害です! って表明できなきゃ仲間になれない?

いくら、市民ですって宣言しても

占い師の保障がなきゃ疑われ続け殺されるもんね(人狼)

でも、現実の世界には占い師レベルに信用されてる人も保障をくれる人もいない。

 

現実。

ふと胸に手を伸ばしかける。

そこには携帯電話が入っているはずだった。

突然、勢いよく障子が開き、あたしは携帯に触れようとしていた手を止めた。

息を切らして飛び込んできたのは、お茶の支度をしていたコーイチだ。

「連続放火魔、また現れたらしいですよ」

彼の言葉に、全員が顔を見合わせた。

鞠貢の表情が引き締まる。

 

それから

「とりあえず、これでここにいる人は全員、犯人じゃないって証明されたね」と鞠貢は口元を緩めた。

現場に急行しようと立ち上がった辰徳の袖を朝里ちゃんが掴む。

「他の連中が消してるさ、今はこっちが優先だろ」と静止し、辰徳は再び腰を落ち着けたけれど、右足で貧乏ゆすりをしてる。

 

犯人じゃないって、証明されても、なんだかなぁ。

放火の知らせ(=あたし無罪の知らせ)を持ってきたコーイチを見上げた。

彼が開けた障子が、また少し開けっ放しになっている。

例の部屋だ。

昼間なのに、まだ布団は敷いたっきり。

女の子が、昏々と眠っている。

障子の隙間から入った細い光が、彼女の髪の上に白い帯を作ってる。

天の川みたいな髪の毛っていうの? こういうの。

櫛なんていれてないだろーに、すごくきれいだ。

いつから寝たきりなんだろう。

もう一週間くらい?

この時代の寺って病院なの?

日本史、二学期三学期もがんばればよかった。

 

 

いや、そこそこがんばってたよ。

そこそこに。

 

 

隠していた携帯電話を取り出した。

乱十郎が横目でチラと睨む。

 

これは未来人の武器だよ(ドヤ顔

 

携帯の電源を入れた。

 

するといきなり、写真フォルダが開いた。

カメラを起動させたまま画面の電源が落ちていたらしい。

目に飛び込んできたのは火災の写真だった。

そうだ、朝里ちゃん、辰徳と三人でいる時に撮ったんだっけ。

 

燃え上がる炎。

屋根の上に登って旗を振っている男。

纏、っていうんだっけ。

……ん、この男……?

 

わぁ、ケータイ電話だ!

と鞠貢がはしゃぐ。

 

なんでしってんのケータイ電話! 持ってないくせに!

 

「これ、スマートフォンでしょ?

鞠貢は、鼻高々に答える。

 

辰徳が首をふった。

 

「ポケベルだろ」

 

 

 

 

 

iPhone

です。

 

 

 

目を輝かせてる鞠貢に尋ねる。

「ねえ、この纏って、みんな同じ服だったりする?」

 

それに答えたのは辰徳だった。

「いや、それは『れ組』の纏だな。それぞれ管轄があって、纏……その旗な、柄は違うはずだぜ。組の顔だからな、それ」

「あたし、この纏、他の火災現場でも見た気がする」

「「「「「え………?」」」」

その場にいた全員が首をかしげた。

鞠貢、朝里ちゃん、恭之介も画面を覗き込む。

あっ、と鞠貢、朝里ちゃんが同時に声をあげた。

「そこまで気が回らなかった。

でも、確かにそうだ。今までの火災現場ぜんぶにこの纏、立ってたよ」

 

鞠貢の目が光る。

迷いのない、断定的な口調だ。

記憶力よすぎて疑う、

……ところなのに、

あたし以外の、その場にいる全員が鞠貢の言葉を信用した。

 

朝里ちゃんが、こいつ、と言葉を続ける。

 

「さっき、こいつのカバン貰ってきたところなんだよね」

 

開けちゃおう! と鞠貢がいい、かしてごらん、と恭之介が受け取った。

れ組の纏のカバンを逆さにすれば、転がりでてきたのは、てのひらに収まる程の

小さなキツネの石像四体だった。

どれも、ほとんど同じ顔、同じポーズのキツネだ。

 

恭之介が、鞠貢、と石像を彼に見せる。

 

「……どれも連続放火で焼けた寺社のだね」

 

どれも全く同じキツネの石像に見えるのに。

鞠貢はよどみなく答え、恭之介は頷くと、畳の上にキツネの石像を並べた。

「考えてみりゃあ、おかしい。れ組の担当地区は千駄木のあたりで、放火現場までは結構距離がある」

「なにより、それが決定的な証拠でしょう!」

コーイチがキツネの石像を指さした。ふん、と朝里ちゃんが鼻を鳴らす。

 

「これ、盗んで肌身離さず持ち歩くほど、かわいいかねェ?」

といいつつ、乱十郎は大してキツネの石像を眺めるわけでもない。

「次の放火は、二日後、ここかな?」

 

恭之介が地図の上に指を置く。

 

鞠貢はそれを見て、眉に力を入れると、

あたしの方に向き直り、ケータイを指さして「ありがと!」と笑った。

 

あたし、事件解決のきっかけ、つくれたっぽい???

自然と口元がにやけた。

「今度こそ捕まえよ」

鞠貢がと立ち上がり、辰徳が、よっしゃ、と拳を握った。

うん。

 

なんだか、うまくがんばれそう、かも。

 

 

 

 

 

(明日に続く →第一幕(十))

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