前回の話→第一幕(九)を読む。

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ほらきたよ。

寺の向こう側から聞こえる足音。

こてん、こてん、と慎重なリズム。踵を少し引きずってる。

寺に張り込むこと、何時間?

 

今までにここを通ったのは

ニワトリ

白猫

蝶々、とそれを追う子供

ガマの油を売る商人。

 

 

………エンドレスエイト?

 

既視感!

 

 

ううん、大丈夫。

放火(予定)の寺の四方を、七人で囲んでいる。

 

東を鞠貢とあたしが。

西を恭之介と乱十郎。

北を朝里ちゃんと辰徳。

南は、コーイチが一人で。

 

大丈夫。

逃げたくならない。

 

 

壁に隠れて、寺の前を睨む。

「そんなに殺気出さないで、力抜いてよ、俺まで緊張しちゃうよ」

と鞠貢があたしの肩を叩いた。

 

力を抜くために、テストの前にもやる例の手段を使う。

 

 

注射される妄想。

 

注射器予防接種採血点滴!! 針!

こわいきらいいたいふにゃーん

 

恐怖でふにゃーんとなる代わりに、やる気も3割ほど低下。

 

「隠れて」

鞠貢の声、どことなく力が入ってる。

纏だ。

 

今 度 こ そ !

 

 

計   画   通   り   。

 

 

いやまだだ、作戦はこっからだ。

纏は寺の中に忍び込むと、すぐに膨れたカバンを背負って出てきた。

そして、火事を知らせる旗を担ぎ器用に屋根へ登る。まだ、火の出ていないうちから。

彼は屋根の上でしゃがみこんだ。

纏の姿が、ここからでは見えない。

 

「おい纏! そんなとこに登って何してる!

向こうで火事だ! いくぞ! 降りて来い!」

 

れ組の頭領の声、らしい。

乱十郎の声真似だ。

とりあえず、纏を捕まえるために屋根から下す作戦だ。

 

が!!!

 

 

焦。

 

橙。

 

煙。。。。

 

火!

 

 

 

発火済。

 

頭領が傍にいるのに、火、つけるか?

れ組の纏、忠誠心とかないの?

 

屋根に登って放火した纏は、さっそく旗を揚げ

「火事だ!」と叫んだ。

火災を知らせる半鐘が鳴り響く。

くそっ、と鞠貢は舌打ちをして飛び出した。

朝里ちゃんの方が速かった。

 

「悪いことするなら、信用できる相棒をつくることだね」

 

にゃああ、とダチョウが鳴き声をあげた。

ダチョウにまたがり、屋根の上へ瞬間移動した朝里ちゃんは、纏が胸に忍ばせていた小刀を奪う。

あたしと鞠貢は寺の真ん前に立ち、屋根を見上げる。

纏の持っていた旗が転がり落ちる。それを掴もうと纏は前のめりになった。

「えいやっと」

いつの間にか屋根に上がっていた乱十郎が、纏の背中を軽く蹴る。

 

彼は屋根からずり落ちかけたけれど、うまいこと柱を掴み、落下回避。

瞬間、火が一段を大きくなり、焦げて黒くなった柱はゆっくり軋む。

鞠貢、と彼の名を呼ぼうとして、口を噤む。

 

燻る火。

ちりりと揺れる火は立ち上り、赤い滝になった。

鞠貢が悪態をつく。

彼の顔を炎が照らす、その後ろに。

橙の地面、焦げ跡のような影。

彼の姿、かたちを、そっくり写し取る様にできるはずの

大きな影が。

 

影が。

 

 

「むやみに火、つけやがって。消すのがどんだけ大変か、知ってるだろ?」

 

 

辰徳は舌打ちすると、ポケットからマッチを取り出した。

 

燃えるマッチ。

 

頬を膨らませ勢いよく息を吹きかけると

 

燃える寺に乗り移る、マッチの火。

 

 

 

巨大化する火。

 

 

けれど、大きくなったマッチの火は、家を燃やす炎を打ち消した。

 

「迎え火」

 

辰徳はマッチの燃えカスをマッチ箱の中に仕舞う。

 

火打ち石じゃないの!? と聞けば、辰徳は

「川本幸民先生という天才発明家がいてだなぁ……」と誇らしげに答えた。

纏は無事、柱を滑り終えた。

このままじゃ、逃がしちゃう。

 

あたしはフライパン(卵焼き専用の長方形のフライパン!)を

 

 

 

 

纏の体の中心部あたりにヒットさせた。

 

纏は腰を折り、膝をつき、地面にうずくまった。

 

 

 

、ヤッた………?

 

……カタカタにするとイヤらしいのでもう一度。

 

 

 

や、殺った………?

(コロしたいわけじゃないよ!)

 

 

あたしがやった。

敵をやっつけた手を見つめる。

直前まで震えていなかったのに、今になって右手小指が痙攣してる。

 

 

あとは誰かがこいつをぐるぐる縛ってくれればおk!

 

「背中向けちゃだめですよ!」

コーイチが叫んだ。

小槌を持ったコーイチが、纏の頸の下を叩く。

 

纏は、草履を握りしめていた。

その草履であたしを叩き潰そうとしていたらしい。

ハエ叩きとは違うんだから。

 

「首の後ろを狙うのが一番いいんですよ」

 

コーイチが自慢げに言う。

だからいちお、お礼を言っといた。

 

消火作業を終えた辰徳が、屈強な体で纏の上にのしかかり、悪さできないよう抑え込む。

纏のささやかな抵抗なのか、彼は足首を動かしてかすかに身じろいでいた。

「こんな大男に乗られるより、縛られた方が楽だよね」

 

穏やかな笑みを浮かべた恭之介が

縄で素早く纏の両手両足太もも腰首を縛り上げた。

亀の甲羅みたいに張り巡らせられる、縄。

 

縛り方って何十個かあるとか聞くけど

結局みんな亀甲縛りしか知らないんじゃん。

 

……でも縛れるのね。

 

 

ふう…… と恭之介が軽く笑う。

 

これがリアル暗黒微笑か!!!!

 

(今まで活字でしか認識してなかった、暗黒微笑か!!)

 

「結局、ちょっと燃えちゃったねェ」

乱十郎が纏を軽く蹴とばしてから、焦げた寺を見上げた。

 

「このくらいなら、大したことないだろ。住職は留守みたいだね。誰もでてこない」

朝里ちゃんはダチョウから降り、纏を見下す。

「俺じゃない! 俺じゃないんだ!!!」

纏が叫ぶ。

「犯行現場抑えられてるんですよ、これ以上どうやって弁明するんですか?」

コーイチが呆れ、辰徳が、ふざけた事ばっかり言うと殴るぞ、と脅す。

「俺じゃない……」

 

「でも君、今まであった火災現場に、必ずいたよね?」

 

――俺、ぜんぶ覚えてるよ。

 

と、鞠貢は続けた。

纏は力なく地面に顔を伏せる。

………どうやら寝ているようだ。

一件、落着でおk?

 

 

 

 

(明日に続く → 第一幕(終)

 

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