前回の内容→第一幕(四)を読む

 

 

路地で一人になると、タバコが吸いたくなった。

ピアニッシモの一ミリ。

 

吸ったことないけど。

非喫煙者だけど。

肌に悪いらしいし田舎の不良じゃないんだから高校生でタバコとか(笑)

だけど、ぷっはーと煙の一つでも吐けたら、

現実と夢の間をうつらうつらとしてられそう。

 

タイスリップ。

異世界トリップ。

コールドスリープ。

マトリックス。

 

あの追手、エージェント?

じゃああたしネオやりたーい。

 

 

はっ。(すかし笑い)

 

 

 

ここが現実でも、ただの夢でもないことは分かった。

分かったところで。

頬を抓ったくらいでどうにかなるもんでもない。

 

――「デートは週に一回とか毎週水曜日は一緒に帰ろうとか、そう約束決めるのやなんだよね」

 

あたしの彼氏はとにかくバスケが得意なヤツで、

ルックスと運動神経の良さがすべての弱点をカバーしてた。

 

「あ、うん。あたしもそーゆー契約農家のようなおつきあい嫌だから

 

 

たまたま時間が合えば一緒にチャリ二人乗りしてかえって

(パトカーきたら飛び降りる)

 

クリスマスとかバレンタインくらいは一緒に過ごして

(恋人イベントはいちお、こなしとく)

 

友達と恋バナがはじまったらとりあえずヤツのことを話す

(恋愛トークは女の友情を円滑にする)

 

我慢できないほどの不満、あった?

そりゃあいやなことなら数える気力が失せるほどあるけど、逃げなきゃいけないほどだった?

 

……受験は確かに辛かったけど、あと一息だったし。

……彼氏にフラれたわけでも酷いいじめにあってるわけでもない。

……LINEのグルチャで無視されたw くらいの軽いジャブならあるけどまぁ特別なことじゃない。

 

タイムスリップって、別にそこまでおっきな事件ではないと思う。

 

時かけ、でも言ってたじゃん。

「思春期の女の子はタイムリープするんだ」って。

 

だからまあ、そういうもんなのよ。(蹴

 

 

すっかーん!

 

と足元に落ちてた小枝を蹴ろうとしたら下駄が脱げた。

 

 

 

またこのパターン。既視感ある。

 

学校が嫌なわけじゃないけど教室に飽きたから、テニスコートで仰向けになってみたりして とりあえず参考書開いたり

でもテニスコートは人工芝が化学薬品臭いから、イチョウのしげる神社に行ってみたりして とりあえず参考書開いたり

でも神社は蚊が多いから避難して、スーパーの試食コーナーで冷えた唐揚げを食べたりして とりあえず参考書開いたり

 

いっつもそう!! いっつもそう!!!

 

逃げ切るわけでも、正面切って戦うわけでもない。

なんとなくふらふらここでもないかもあそこでもないかも、

ここも悪くは無いんだけどなんか違うかも、と流浪の民状態。

 

そやって放浪してたら、なんかどっかで道間違える。

 

だからお導きを! せんせぇ!!

 

「汝が駆ける道は王道也。

汝、そのまま邁進したらば善き親友と生涯を共にする夫、

そして難関大学への合格切符を手に入れること間違非ず

との保証ぷりーず!!

 

胸に手を当てる。

祈ってるわけじゃない。

懐。胸元にケータイ電話をしまってた。

取り出してみれば、電波がちゃんと立ってる。

試に、かけてみようか。

 

誰に?

 

何の用事で?

 

自分でどうにかしなきゃいけない、

ときほど、

助けてしんどいヘルプ、と言いたくなってしまう クズ感。

 

ヘルプ下さい、ってゆーのも しんどい めんどい。

 

もう、いんじゃない?

 

どんな場所にいようがどんな過去だろうがどんな未来明日だろうか

 

どーでもいいや

 

17歳のじょしこーせーが段ボールにはいってりゃ 

誰 か 拾  う  で し ょ ?

 

段ボールもぐもぐなう とかツィートしたら

誰 か リ プ く れ る で し ょ ?

 

つーかこの時代は段ボールないのか、

に入ってるなう、 なのか?

 

 

見上げれば太陽が見えるのに、ここは薄暗い。

人の気配も何もない。

纏わりつくのは湿気だけ。

 

今度は 地 面 が  揺 れ た 。

爆発?

 

表通りから、火事だー! と怒号。

捕まえろー! との声も混ざる。

まだ、追われてるんだろうか。

 

振り返れば、向こうの屋根か焔が顔を出している。

すぐさま駆けつけ、炎と戦い纏をあげる火消。

 

また火事か(呆れ顔)。

どうしよ。

 

・選択肢その1→現場付近うろついてるとあやしまれる→逃げるべし

・選択肢その2→現場付近には犯人がいる可能性高し→捜索すべし

 

 

 

ふつーに考えたら、逃げるべし、だ。

 

 

 

火事に背を向け裏長屋を走り抜け、目塗りの終わった米蔵の裏に回ると、

壁に片腕をついている男の人を見つけた。

怪我してる……?

 

違う。

壁についた手は通常の二倍に膨れ上がっている。

だらりぶら下がるもう片方の手は人間のものだ。

乱れた髪の隙間から尖った耳が覗いている。

左足は華奢な人間の足。

右足は、獣の足だ。

膝小僧の骨が浮き出しふくらはぎの筋肉は異常発達、金色の毛でおおわれている。

妖怪……?

風が止む。

 

妖怪がゆっくり振り返った。あたしは体を固くする。

彼が軽く、人間の形をした左足のつま先で地面を叩いた時、着物の裾が翻り、

次の瞬間には、完全な人間の姿に変わっていた。

 

カタチは人間になっても、

鋭く澄んだ目は獣の目だ。

 

彼はすっと人差し指をあたしの顔面につきつけた。とっさに瞼を閉じる。

 

「お前、放火魔なんだってな」

 

「違うし!」

 

何、あたしを掴まえたいの?

幕府は妖怪を飼ってるわけ??

「追われてるんだろ? たのしそーじゃねーか」

「こんな娘に、自分で考えて動く力はないでしょう、おそらく」

 

妖怪男の後ろに、もう一人。

背筋ピーン、髪の毛ピーン、つま先指先鼻先までピシッと感。

圧倒的下っ端感

真面目そのものの風体で、完全に人間の姿をしている。

ただし、なかなか目つきが悪い。そいつは、あたしの体を舐めるように見つめる。

 

 

「こいつ、使えるかも」

 

 

小声のわりに、隠す気ないですよね?

 

妖怪男(?)はその男の言葉を無視した。

 

男は足音一つたてずあたしの正面に立ちクツクツ笑う。

と同時に

向こうで爆発音がして火が一回り大きくなった。

肩を震わせれば、妖怪男が、ふん、と笑った。

 

「たのしむ余裕ないですから、逃げるのに必死なんで」

 

「もったいねーな、おもしろそーなゲームの中心にいるのに。遊び方考える知恵、ねーのか」

俺も久々に、おもしれー鬼ごっこがしてーなぁいやもう十分か、

と、彼は一人でほくそ笑み、履物の底をカランと鳴らし

 

 

「遊びにしねーt………n………mk…t……z…」

 

 

 

 

 

 

頭……痛い…

 

 

 

刺すように……痛っ…いたい……

 

 

 

 

後頭部に違和感、

 

 

 

 

目を開けたら、

頭頂部にカマキリが止まってた。

 

 

 

 

もう虫やめれし。

 

 

 

頭頂部に集まる虫を追い払い、当たりを見渡せば原っぱにいた。

眠ってたらしい。

さっきまで路地にいたはず。

妖怪との会話、あれも謎のトリップだったんだろうか。

あいつ、最後になんて言ってたっけ。

 

 

「遊びにしねーと、延々負け続けるぜ」

 

 

遊びにする方法。

問題解決って、楽しめるのだろか。

逃げるんでも、しがみつくんでも、眺めて堪えるんでもなく。

 

胸が震えた。

 

比喩じゃなくて、ガチで震えた。

 

 

セーラー服を脱ぎ捨てても、これだけはどうしても置いてこれなくて、懐にしまってきてた。

携帯電話だ。

マナーモード。

振動の仕方で相手が分かる。彼氏からだ。

 

 

 

今は、出ない。

 

 

あたしは着物の胸に手を当てて、携帯をしまったふところを

するすると撫でた。

わけのわからない世界だ。

わかんないことはどうでもいい。

どうでも、と呟いた時、朝里ちゃんと乱十郎、鞠貢の顔が浮かんだ。

一緒に食べた魚の味。

ダチョウの柔らかい羽。

川のにおい。

樹の下で交した草相撲。ちぎれた草。

 

友達になる約束とか、何一つ結んだ契りはないけれど。

 

勝ちたい。

 

 

 

 

――放火魔、捕まえてやる。

 

 

 

 

(明日へ続く →第一幕(六)を読む

 

 

ランキング参加中♪

面白かった人はぽちっとお願いします☆↓↓↓↓

ネット小説ランキング>【登録した部門】>妖式コンゲーム

 

nnr

 

 

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加