どうも、起きて一番最初にすることは「小説家になろう(以下、なろう)」のお気に入り更新確認になっている、斉藤です。先日書いた「なろう」を紹介した記事は、愛のあまり、ツンデレな内容になったので怒られるか心配でしたが、割りと好評で嬉しく思っています。

 

スケルトンになっても人は飢える~「小説家になろう」のドライな世界にせまる~

 

そこで今回は、ちょっと調子に乗って、おすすめ小説を紹介してみようと思いました。

 

いま、なろうは話題なのか

 さて、今年の夏コミでは敷居亭さんが「なろう」を特集した同人誌を販売し、新刊の購入者は100人を悠に超えていた。人気小説の作者へのインタビューが収録されており、通販も開始ししたようである。自分も購入したが、なろうに興味のある人には、ぜひおすすめしたい。

テキスト系Web創作の”今”を切り取る – 夏コミ新刊『敷居の部屋の最前線-Front Line-』

キャプチャ 

 

 このように、コミケで特集本が好評を博すほどに人気の高まりをみせる「小説家になろう」だが、今回は「なろう」で何から読めばいいか分からない初心者の人に、僕の独断と偏見のもとにおすすめの小説を紹介したい。一応、僕なりに考える「なろう」の魅力を、以下に紹介する6つの作品に詰め込んだつもりだが、必ずしも一般的にオススメすべきなろう作品とはかぶらないことは承知している。そういう作品を読みたい方には、以下のリンクをおすすめしておく。

 

小説家になろう:累計ランキングBEST300

小説家になろう:初心者にオススメの作品とかあるかな?

 

初心者でも”なろう臭さ”が分かる三つのポイント

まずは、僕が初心者向けに選んだ二作を紹介しよう。

 

「伝説の木の棒」

http://ncode.syosetu.com/s3658b/

 

 これは恐ろしいことに、タイトルそのままの作品だ。

 つまり、主人公が「木の棒」なのである。

 

 この作品は、なろうの中でも転生モノというジャンルに属する。転生モノは、「俺TUEEEE」を味わえる小説が非常に多いが、この小説では、なぜか「木の棒」となってゲーム世界に転生してしまうという設定への驚きがある。

 

 この「転生モノ」は、なろう初心者は知っておきたい、なろうポイント(その1)である。

転生した世界で、生前の知識や転生ボーナスなどを活かし「俺TUEEEE」を体感できる小説。なろうでは、巨大勢力を成すほどに数が多い。ファンタジー要素が強いが、主人公は、別に大層な能力を持つ必要はない。会社で習った簿記や高校理科を使って、ブイブイ言わせる小説などまである。転生モノで重要なのは、単にゲームの世界に入り込むのではなく、今まで生きていたことを無にして、丸ごと転生してしまう点である。この都合の良さ、イージーさこそが、最大の特徴である。

 

 「その1」ということは、もちろん他にもまだあって、残りの2つはこの章でおいおい紹介していく。さて、そんな転生モノの中でもこの作品を紹介したのは、通常の「なろう」の転生モノ作品はさすがに一般読者には鼻で笑われるシロモノだろうと考えたからだ。幸い本作では、あれらの作品の展開の都合の良さに垣間見える人間のドロっとした内面が、木の棒というコミカルさによって脱臭されている。転生モノの初心者には、オススメだ。

 それにしても、ゲームのキャラクターに転生するものは、ラノベやアニメ、他の小説でも読めるかもしれないが、木の棒に転生してしまうというのは……なるほど、わからん。別にパロディを狙っている風でもない。この不思議な面白さは、転生モノが日々発展を続けている「なろう」だからこそ読めるものだろう。

 

「迷宮の王」

http://ncode.syosetu.com/n0488v/

 

 この『迷宮の王』は、ゲーム的リアリズムを突き詰めた作品として、極めて優秀だ。舞台はゲームの中……ではないのだが、アイテムインベントリ・経験値・ユニークモンスターなど、ゲーム用語が至る所に散りばめられている。

 

 というわけで、初心者向けなろうポイント、その2「ゲーム的リアリズム」について。

東浩紀さんの著書で展開された方の概念では、もっと巧妙なものだったが、僕がここでなろうについて指摘するそれは、はなはだ単純である。要は、ゲームのように、虚構のリアリティを表現するという意味である。「なろう」では、ゲームに関連する描写が大変に多い。それは舞台設定がVRMMORPG設定や、ゲームの中への転生であるだけにとどまらない。主人公の成長は、数値のレベルアップや能力の獲得で表現されることが多く、舞台設定や描写にまでゲーム的な描写がされる。都合のよいことしか求めない欲望が、常に超イージーモードで、気持ちよく俺TUEEEEを実感できる形で表現されるのもまた、特徴的だ。

 

 本作の主人公は迷宮のボス・ミノタウロスなのだが、なぜかバグって自我を手にしてしまい、戦うことの快楽に目覚めていく。この小説の面白さは、最初は単なるモンスターに過ぎなかった存在が、自我を持つことで、ゲームにおけるプレイヤーキャラクターと同様の機能を獲得していくことだ。アイテムがたくさん入る四次元ポケットのような「インベントリ」や、アイテム、マッピング機能などを使いこなすようになり、純粋に強さを追い求めた果てに、彼はついに自分がラスボスになってしまう。その姿に、僕は感動を禁じえない。

 この小説は「なろう」特有の「ゲーム的リアリズム」のある小説として大変に優秀なものだ。ファンタジー好きな方は『迷宮の王』を最初に読むことをおすすめしたい。

 

 ただし、実はこの小説は、「なろう」のゲーム的な小説の中で人気が高い作品ではない。というわけで、なろう初心者向けポイントの最後、その3「クオリティ無視」について指摘しておく

『迷宮の王』は、「なろう」の中では間違いなく小説としてのクオリティは最上級のものになる。しかし、この作品は類型ランキング上位には入っておらず、評価されているとはお世辞にも言いがたい。「なろう」は、通常の意味での小説のクオリティを重視する世界ではない。これは、このサイトで読んだり、自ら書いたりし始めた人たちが、まっさきに誤解する点であるので注意されたい。「なろう」は、あくまでも「なろう的」な小説を求めに来る場所であり、普通の小説を求める場所ではない。

 

 

男を信用しない非モテアラサー女子を描く

 次は、女性向けの作品を取り上げたい。なろうの書き手や読者は、男性だけではない。セカンドランキングを見ると実は結構女性向けが多く、夢小説のような甘い恋愛小説や、乙女ゲームの中に転生する作品まである。実は、僕はこのジャンルが結構好きで、かなり追いかけてきたつもりだ。

 とはいえ、その全貌をここで紹介するのは難しい。そこで、ここではひとつ大変に興味深い、「徹底的に男性を信用してない」女性向け作品という、「なろう」で一大勢力を持つ作品群を紹介したい。ここには、現代の(おそらくはアラサーの)非モテ系女子の欲望が、かなりあけすけにあらわになっている。少なくとも僕は、他のジャンルでは見たことがないタイプの作品たちで、新たな世界をのぞいてしまった気分になったものだ。

 

「エルサティーナの笛吹姫」

http://ncode.syosetu.com/n5174n/

 

 男性不信モノの極北はコレだ。本当に救いのない、徹底した男性への期待の断念が伝わってくる小説である。

 昔から好きだった王子様と婚約することになった主人公。だが、召使が失われた名家の娘であることを知った彼は突如、婚約破棄して召使と結婚してしまい、やがて主人公はシンデレラのような待遇を受けることとなる――いきなり始まるこの展開だけでも、かなりひどいのだが、さらにひどいのはここからだ。そんな境遇の中で、彼女は王子に仕掛けられたクーデターを未然に防ごうとするのだが、なんと主犯にレイプされてしまい、しかもそれを王子様に見られてしまう。耐え切れずに出奔した彼女は、一体どうなるのか――結末は小説を読んでみてほしい。彼女なりの生き方は美しいが、恋の甘い展開は一切ないまま終わっていく。

 

 作中でもっとも印象的なのは、王妃になった召使の首筋にキスマークを発見するシーンだ。これはつらい。実は王様は、主人公のことを愛しているにも関わらず、上手く伝えられないままに、彼女の状況を悪化させているのだ。

 一方で、王妃になった召使は、これほどに女の子を苦しませる王様を愚かだと思い始め、出奔した主人公の逃走を手伝うようになる。「え、どういうこと?」と一瞬思うかもしれないが、このように男性を出しぬいて女の子を助ける強い女性は、男性不信モノによくみられるキャラクター類型である。

 

 

「悪役令嬢後宮物語」

http://ncode.syosetu.com/n6169bb/

 

 こちらは男性不信モノでは最も人気がある作品の一つである。つい最近、書籍化も決定した。端的に内容を説明すると、後宮の女の子たちが結託して、空気の読めない王様と男に媚びるうざい女をなんとかする話である。

 

 この物語の主人公の最大の特徴は、家族一同「悪人面」なことだ。見た目のせいで、周囲から自分の言葉を額面通りに受けてもらえない。彼女の本質はお人好しの頑張り屋さんなのだが……。しかし、この作品のすごいところは、そこで通常の少女漫画などのように、男が正しく女性の本質を見ぬくことによって主人公が日の目を浴びるなどという展開にならないことだ。この物語の女性たちは、男性からの理解をハナから諦めているばかりか、全く信用していない。

 かつてこんなに男性が嫌われている世界があっただろうか。ここまで男性への厳しさが克明に描かれた作品群を読めるのは、おそらく「なろう」だけだ。この作品にかぎらず、「男は余計なことしかしない」「男に縋らず自立せねば」という認識に貫かれている作品群が、かなり存在する。とはいえ、この小説に関しては、最近登場した「後宮に潜むスパイ」が本質を見ぬくことのできる男として描かれ、主人公といい感じになりつつある。連載中なので、どうなるのか予断はできないが、男性の僕としては彼を応援したいところである。

 それにしても、なぜ男性不信モノの作品が、こんなにたくさんあるのだろうか。なかなか不思議な話な気もするが、実はさほど難しい話でもないかもしれない。なぜか。

 この「なろう」のトップページを見てほしい。


 

 そりゃそうだよ。

 

 これらの、「なろう」の男の身勝手さに溢れた小説たち。しかも読んでみれば、彼らはもはや女性という存在を、差別や蔑視ですらなく、単に記号としてしか見ていないことがよくわかる。こういう場所に、「男って私たちの期待に応えてくれないよね」と男性に期待しない女性向け作品が存在することは、ある意味整合性があって面白いなと感心してしまう。私たちの世界には男不要! と男性不信バリアが張られており、「見てはいけないものを見てしまった……」と背徳感に駆られるが、大変に勉強になるので男性にもぜひ読んでもらいたい。

 

 

「俺の求めるなろうだ!」と思ったおすすめ二作

 残り二作はとにかく私的なオススメをあげてみた。前の記事に書いた「スケルトンもの」と、もうひとつはこれだけは自分の純粋な好みとして紹介しなければならないと義務感を持っている小説である。

 

「僕は骨が好きだ。大好きだ。」

http://ncode.syosetu.com/n7341bl/

 これは、骨に欲情するシリアルキラーがRPG世界に転生して、スケルトンに一目惚れする話だ。詳しくは前の記事にあるが、「なろう」では妙にスケルトンの存在が好意的に描かれている。食欲も睡眠欲もない、ハーレムがいいといっても女性に過剰に期待してないし、セックスしたい欲を感じない。ただただ影響力を持って、ゲームをし続けたいスケルトンの姿には、「なろう」の欲望が象徴的に表現されている。

 

 ただし、この作品は、そんなスケルトンものの中でも珍しいシチュエーションが出てくる。なにかというと、スケルトンとセックスするのである。さすがにその発想はなかった。しかも、描写が妙に扇情的で、複雑な気分になれる。そんなものは、世界中探しても、この小説にしかない。あまりに素晴らしいので、以下に引用しよう。

 

洋灯ランプに照らされるリサの折れてしまいそうなほど華奢な肢体。漆黒を映したくぼんだ瞳。きめ細やかな白い骨はだ。そんな美しい彼女が僕の物になったのだ。

 

 部屋に二人きりになり、我慢ができなくなった僕はリサをそっと布団に押し倒す。

「リサ、僕のかわいいリサ。僕は……リサがたまらなくほしい」

 リサは視線をそらしている。僕の顔を直視できないようだ。羞じらうリサもかわいらしい。

「嫌かい?」

「……ツトムならいいわ」

 その言葉をきっかけに僕はリサを――もう、それこそ彼女を骨の髄まで味わいつくした。

 

「ツトムったら、激しい」

「す、すまない。どこか痛くないか」

 相手は骨だ。最初は気を使っていたが、途中から理性がどこかへいってしまった。それはもう獣のようにリサを愛でたのだ。

「大丈夫よ、初めてで色々びっくりしただけ……」

 人間だった頃も、体験したことがなかったようだ。僕はリサの「はじめてすべて」を頂いたのだ。初々しい様子のリサに、僕は少し……いや、かなり感激し、ぎゅっと抱きしめた。

 

 つい先日完結したが、割りとあっさりした終わりであった。実はあのシーンが書きたかっただけで、すでに作者はもう欲望を満足させてしまっていたのだろうなと感じさせた。これはこれで大変に「なろう」らしい作品であった。

 

「俺より強いあの娘を殴りに行く」

http://ncode.syosetu.com/n9692bo/

 

「さぁ、俺より強いやつに会いに行こう!」  対戦格闘ゲームのブームが去って数年、細々と経営を続ける街のゲームセンターの片隅で、磨きぬいた技術を競い合う格闘ゲーマーと呼ばれる人たちが居る。 お金にもならない、誉められることもない。それでも闘い続ける二人の格闘ゲーマー、浩介と忍の熱くて短いひと夏の物語………格闘ゲームを愛するすべての 人々と、格闘ゲームを知らない、あなたのためのお話です。

 

 最後に紹介したいのは、僕がなろうで一番好きな小説だ。これは、格闘ゲームに賭けるゲーマーの「戦い」と「恋」を描いた物語である。しかも、題材の格闘ゲームは架空のゲームとされているが、見る人が見れば分かる。これは、明らかに「ストリートファイターIII 3rd STRIKE」だ。

 僕の住んでいた男子寮には、大学生活をほぼすべてこれに費やしたゲーマーが結構いた。この小説を読んでいると、彼らが「ゲームの意味のなさ」と全力で戯れる青春を過ごしていたことを、僕は思い出してしまう。そう、ゲーマーとは青春のためになら、無意味さを物ともしない生き物なのだ。この小説は、甘酸っぱい恋に乗せて、そんな「ゲームの無意味さ」をかなり骨太に問うている。

 

 ここまでの紹介を見てわかるように、本作は全く「なろう」的ではない。いや、そもそもWeb小説を多少読んだ読者なら知っているように、Web小説としても異端である。だが、ここにはかつて私達がウェブ小説に期待していたような、理想像が存在しているとは言えないだろうか。それは、とあるマイナーな趣味に詳しい作者が、それを題材にした小説を、誰に読まれずとも書き、その小説のおかげで、読者は自分の知らない世界を感じることができる……そんな光景だ。

 

 しかし、そのような理想は、結局は「なろう」のような形でしか実現しなかった。それがウェブ小説の現在である。

 

「なろう」ではメジャーではないタイプの小説であるため、クオリティに比して、全然読まれていない。それはとても悲しいことなので、この記事がこの小説を読むべき人に届くきっかけになると嬉しい。

 

皆様のおすすめ「なろう」も教えてください

 ひと通り書いてみて、やはりゲーム的リアリズムと、妙に枯れたセクシュアリティこそが「なろう」の華なのだな、と思った。調子に乗っておすすめ「なろう」を披露してしまったが、皆様のおすすめ「なろう」もぜひ知りたいので、いいのがあればぜひ教えてほしい。

 

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