2013年9月15日、ニコニコ町会議が台風で中止になる中、僕は東京都立産業貿易センターに向かっていた。お目当ては「カゲロウプロジェクト」の同人即売会だったのだが、Twitterを見ると「艦これ」という文字をよく見る。なんと、艦これの即売会が同時に催されていたのだ。その日は他にも即売会が併催されていて、都産貿は賑わっていた。カゲロウはもちろん、最近は艦これにもハマっていたし、これ幸いとダブルヘッダーに臨むことにした

 

 2chなどで台風の日に開催と話題になっていたが、実は開場する11時頃には小雨になっていて、足を踏み入れると運営、参加者ともにほっと一息と安堵の空気が流れていた。3Fでは、まさに飛ぶ鳥落とす勢いの「艦隊これくしょん-艦これ-」オンリーイベント「砲雷撃戦よーい2」、5Fでは、中高生に絶大な人気を誇り、ニコ厨の夏を盛り上げた「カゲロウプロジェクト」オンリーイベント「メカクシ団活動日誌」が同時開催。3Fでは、「まどマギ」や「アイカツ!」「ガルパン」「ぷよぷよ」などの即売会も併催されていたが、最大手はやはり、艦これ。しかし、人気タイトルが並ぶ中、艦これに次いで人を集めていたのはカゲプロオンリーだった。

 

 それにしても、艦これとカゲプロの客層は本当に異なっていた。この日、都産貿は謎の空間と化していたと思う。会場入口には小学生の女の子もいれば、台風の中かけつけたおじさんたちも集っており、熱気がむんむん。世代も消費するコンテンツも違えど、嵐の中駆けつけた彼らは、そこはオタク同士。各々戦利品を、興奮しながら眺めていて、なかなか面白い光景であった。

 

年齢層も男女比も全然違っていた

 

「砲雷撃戦よーい2」に並んでいた人は、30代が一番多く、男性が9割ほどだろうか。サークル参加者側も、若くて20代、大体は30代以上に見えた。

 

かんこれモブ2

人が集まりすぎて、歩くのも大変だった……人口密度はコミケ越えか

 

 対して、「メカクシ団活動日誌」に来た人たちの平均年齢は、おそらく10代なかば。親と一緒にきた小学生を始め、中高生が中心だ。

 しかも女の子の多さといったら!――とある15歳の女の子などは、「台風の中、親が止めるのを振りきって茨城県から来た」と話していた。一方、男性は遠目に数えられるほどで、話を聞いてみると、男性客というだけで一致団結したというカゲプロファンまでいて、つい笑ってしまった。

 

 サークル参加者側も、現役高校生のサークルが多数。なんというか、非常に初々しい。

 

カゲプロモブ

カゲプロオンリーの様子。女子中高生が主な客層。

 

年齢層が与えている影響 ~歴戦の猛者たちと初々しい中高生

 

 そんな年齢差は、即売会全体の様々なところに現れていた。例えば、「艦これ」の出展者は、みな歴戦の同人戦士たち。同人誌のみならず、様々なグッズが散見される。

 

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高速修復剤のバケツが、キャンドルになりました!

 

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 ガチャで艦娘の缶バッチが出る

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島風のおしりマウスパッド。捗る。

 

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羅針盤の形をした時計!これは可愛い!

 

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ロックグラス、かっこいいですね

 

 作れる数量に限りがあるグッズを除いて、人気作品以外は売り切れも少なく、在庫管理もばっちり。おそらくは、「とらのあな」などに遠征に行く分も含めて、刷っていたのだろう。コスプレイヤーのおねーさんも、小物に凝っており、ポーズも手慣れたものだった

 

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摩耶!装備がすごい凝ってる!

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天龍イケメンすぎだった

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羅針盤片手に、エラー娘。

 

 それに対して、「カゲプロ」の出展者たちは、なんというか初々しい。

「今日がはじめての即売会」という人も少なくなかったのではないだろうか。艦隊これくしょんのような凝ったグッズは少なく、ポストカード・ラミネートカードなどの可愛らしいアイテムが多かった。帰ってから、きっと部屋に飾るのだろう。なんだか、心温まる。イラストの絵も、線が太めで、艦これに比べると最近の若い子が好きなタイプの絵になっている。

 

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カゲプロオンリーの戦利品です!

 

 少し残念だったのは、即売会の経験不足からか、14時前には売り切れているブースも多かったことだ。とはいえ、あるサークルなどは、30分で100冊が売り切れたという。ものすごいスピードだ。

 

 カゲプロのコスプレブースは、艦これに比べるとオフ会の延長線上という雰囲気だった。「みんなでコスプレしてきた」という子たちも見られた。12歳・13歳の中1コンビに、「2ヶ月前のライブで知り合い、初めて本格的にコスプレしてみた」という17歳~18歳の男子のグループ。

 彼らはライブで知り合ったあとに、リアルでもつるむようになったらしい。大変に青春感があって羨ましい。僕もこんな青春過ごしたかった!

 

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若いのに衣装も本格的!銃を構えてくれました

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みんな男の子

 

両主催に話を聞いてみた

 

 せっかくなので、両即売会のスタッフの方に時間を頂き、インタビューをしてみた。まずは、艦これを始め、3Fの併催即売会を主催した前川 さん。

 

「いやーびっくりしました。台風が重なったので、会場するまではどうなるかと思いましたが、おかげさまで想定人数よりも1000人は多く来ましたね」

 

 13時過ぎの時点で、累計来場者数は2000を超えていたが、その後は忙しすぎて把握できていないという。しかし、準備は万端だ。

 

「今回の同人即売会のスタッフは、歴戦のオールスターで臨みました。ブースもこんなにたくさんの方が出してくれて、心苦しいけど落選したりもしています。ありがたいですね」

 

 前川さんと話していると、即売会の運営経験が豊富な様子が伝わってくる。そんな彼が、艦これには手応えを感じてる様子がうかがえた。

 

 一方、「メカクシ団活動日誌」主催のメカクシ団活動日誌記録係さんの方はというと、本職は普通のサラリーマンらしい。忙しい中で、企画意図などを細かく聞いて嫌がられないかと思ったが、むしろ本当に嬉しそうに語ってくれる。

 

「もともと構想時点で想定していたのは、IAオンリーでした。最近カゲプロが伸びてるから、併催すれば人が集まるかなという意図でした。実際、他のボカロ系の即売会では、カゲロウ同人は1~2サークル程度と多くなく、当初は、50サークルくらいのこじんまりしたイベントになれば十分だと考えていました」

 

 しかし、発表してみると、すごい反響が返ってきた。

 

「急遽スタッフの体制を整えたりすることになりました。とても嬉しかったです。カゲロウは大変によいコンテンツなのでもっと盛り上がってほしいですね」

 

 タイムラインを眺めていると、台風で親に止められるなどで、来られなくなった中高生はかなり多いようだった。それでも、これだけの来場数があることは、カゲプロの人気を感じさせる。

 

「こちらも台風にもかかわらず、想定していた最大の人数より少し多かったくらいになりました。台風でなければ、入場を止めて制限することも、あり得たかもしれない」

 

「メカクシ団活動日誌」は、参加者が若いこともあってか、カタログはPDFのみの事前配布であった

http://kagepro.fingertipmilktea.info/mekakushi_kata2.pdf

 

また、ちょっとしたARGのような「エネを探せ」という企画も行われていた。

 

エネを探せ―メカクシ団活動日誌

 

 ちなみに同人即売会におけるARG的な取り組みは前回の「博麗神社例大祭」でも行われ、好評であったようだ。今後、これは一つの流れになるかもしれない。

 

今回のイベントの意義

 

 以上のように、9月16日の都産貿は、一つの建物の中で、まったく違う濃密な世界が体験できる謎空間であった。しかし、恐らく多くの人はこの二つの即売会が同時に同じ箇所で行われていたことに気づかなかっただろう。また気づいても、僕のように両方の即売会を見た人間はごく少数だろう。この日は両運営の努力もあり、来場者たちは双方が混線することもなく、穏やかな隣人として時を過ごしたようだ。

 

 しかし、双方への注目度には大きな差がある。典型的なのは、メディアの対応だ。艦隊これくしょんは、現在ネット上で最もホットなコンテンツということで、さっそくネットメディアが取材に来ていたようだ。その一方で、記録係さんが語るように「カゲロウプロジェクトは、22歳以上はほとんど知らない」。だが、下の世代からの支持は、やはり圧倒的だった。その熱気は艦これにも引けをとらない。

 

 おそらく今、オタク文化には再び、静かに世代間の断絶が生まれ始めている。そうした断絶のコンテンツにおける現れの一つが、カゲプロへの上の世代による、びっくりするほどの無視だと思う。しかし、嵐の中で危険な思いをしてわざわざやってきて、一階のロビーで戦利品を隣り合って眺めるお兄さんたちと女の子たちを見ていると、時にそれが不可避に交じり合うこともあるのだな、と思う。「あ、今日人多いと思ったら、艦これもやってるんだ」「今日なんか女の子いるけど、カゲプロもやってるっぽい」といったように多少の興味をお互いにもっている様子の人たちもいた。

 

 かつて僕もまた、即売会でとある著名な哲学者の同人誌を売ったことがある。その人は、僕らが学生時代、上の世代から無視されていた僕らの好きな文化を真正面から語ってくれていた人だった。彼の好んだ言葉を借りるなら、その日見た光景は、まさに「誤配」だったのだと思う。ネット上でも、こんな光景が見られるようになったらいいなと思って、僕は会場を後にした。ねとぽよの中で、カゲプロ・艦これの双方を、今後をウォッチしていくべきコンテンツと認識し、このPOYO NETで様々なレポートを続けていきたいと強く思いながら。

 

 

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