かつて、まだ中高生だった頃に、聞かれて困る質問があった。

 

――「へぇ、ハリポタ好きなんだ。特に何巻が好きなの?」

 

ハリー・ポッターシリーズは、巻ごとに特色がある。例えば、親世代好きにはシリウスとルーピンが活躍するアズカバンの囚人が人気だし、スネイプ好きには謎のプリンスが、リドル好きには秘密の部屋が受けていたように思う。

  ハリー・ポッターと秘密の部屋

でも、私にはそれを答えるのが、どうしても難しかった。そして、この質問に答えられないまま、いつの間にか私は大学に入り、やがてハリポタから「卒業」してしまったのだった。

 

あれ、こんな話だっけ。

 

ところが、このところ金曜ロードショーでの放映や、ハリポタ展、ハリポタカフェなどで、ハリー・ポッターが再び話題になっている。そんなこともあって、手に取っていなかったハリー・ポッターの原作を、久しぶりに読み返してみた。

私はリドルが好きだったので、とりあえず、リドルの日記が登場する「秘密の部屋」を手に取った。小さい頃、その世界観におぼれて、むさぼるように読んだ、あの「秘密の部屋」だ。

しかし、昔のアルバムを開くような気持ちでページを開き、物語を読み終えた私の感想は、この一言に尽きた。

 

……なんか違う。

 

ハリー・ポッターの本を手に取ると問答無用で興奮するし、映画のBGMを聞くと動悸がする、それらに嘘はないのに何故か違和感を感じてしまった。ハリポタ展も、ハリポタカフェや映画もそこそこ楽しんだはずだったのに。

その疑問は、アズカバンまで読んだときに、なんとなくではあるが解消された気がした。

 

あれ、リーマスがチョコレート大好きで目が細くてクスクス暗黒微笑する設定ってどっからきたっけ。

シリウスは遊び人のはずだけど、この凶悪犯シリウスって女っ気微塵もない………。

シリウスをヘタレ犬だと罵っていた記憶があるんだけど、一体どうして…………。

 

ていうか、私ってアニメーガスになる時、何の動物に変身するんだっけ。

確か黒猫だったような気がする。

 

 

 

…………はっ!!

 

そういえば私はかつて、東洋の美少女で、月光のごとく輝く銀髪が自慢で、色白オッドアイの純血だった。あるいは、実年齢は百歳を越えてるのに見た目は少女のままだった。時には、ずっとマグル界にいたけれど、実は特殊な魔法一族の生き残りだったりもしたっけ。

久々に原作を読み返して遅まきながら気づいたのは、私はずっと、原作と映画だけではなくて、そこから生まれたHP上の二次創作まで含めてハリーポッターを愛していたことだった。

 

ハリポタの世界が欲しい

 

原作を読んだ後は、夢好きだった私はハリポタ原作沿いドリームを読み漁ったし、自分が入る隙を探して、原作の設定や場面を見返していた。自分が原作沿い夢を書くときには、膝の上に本を置き、消しゴムを文鎮にして、読み返しながら執筆した。単なる読書とも、創作ともまた違った感覚だったように思う。

原作の何巻が好きだとか、小説のこのシーンが好きだとか、この台詞が良かったとかではなかった。私が好きだったのは――ハリポタの世界そのものと、そこに入り浸っている時間だったのだ。

 

だから、ハリポタ展に足を運んだ時、それはそれは楽しかったけれど、毎日入り浸りたいと思うほどにはハマれなかった。興奮よりも、妙な寂しさの方が勝ってしまった。

それはきっと、ハリポタ展が「ハリー・ポッターを見せる物」だったからだ。どうしたって小道具はガラスケースの中で、衣装はロープの向こう側にあって、「お手触れ厳禁」だ。私はハリー・ポッターを眺めたいんじゃくて、ハリー・ポッターが欲しかった。なんならその中にめり込みたかった。

 

ハリポタ愛は目の前にあるコンテンツ単体に収まらない。
けれど、紙の本や映画や展覧会は、私たちに「見せる」ことしかしてくれない。
眺めるだけでは収まらないハリポタ愛を、解決してくれたのがインターネットだった。

 

それは例えば、名前変換という魔法――名前を付けるだけで私はホグワーツの生徒になって、呪文が使えた。ドリームメーカーを使えば、自分の思うようにハリポタ世界の中で主人公を動かすことだってできた。

 

夢小説がかけてくれた魔法も含めて、ハリー・ポッターが好きだ。

 

どう頑張っても、この現実で守護霊を呼んだり、勝手に動く階段にうっとりしたりすることはできない。好きな世界に入り込みたい願望は、ハリポタを消費することじゃなくて、夢小説を生産消費することで、果たされたのだ。

 

 

ハリポタ世界、召喚魔法!

 

そんな私だけど、ハリポタの世界を、こっちに呼び寄せることならできるかもしれないと、思ったりもする――ハリポタの世界には、決して行けないとしても。早く食べないと逃げてしまう蛙チョコも、蝋燭の浮かぶ大広間も、空飛ぶ箒も、私には手に入れることはできないけれど、『マグル界』で『マグル』としてハリポタにかかわることは現実に可能かもしれない。

 

なぜこんな話をするかというと、実は、私は今回ねとぽよのイベント「ホグワーツ出張授業 in 東京」運営兼参加者として関わっているからだ。

 

sukusyo

ホグワーツ出張授業 in 東京 ~廃校で夢と魔法の集いを~

 

そのイベントのコンセプト、というか運営上の合言葉のようになってるのは、「ハリポタの世界に行くことはできないけど、ハリポタの世界をこっちに呼んでくることならできる」というものだ。だから、出張授業がやってくるのである。

 

だけど、ただそこに出張授業が来るだけでは、難しい。
そこには、きっと魔法が必要だ。
でも、その魔法のかけ方は、きっと夢小説と一緒だと思う。

あの誰でも使える魔法をかけるだけですむ。
例えば、私はただの社会人だけど、「そこのマグル女」と呼ばれるだけで、なんだかハリポタの一部になれたような気がする。

 

――まるで、逆トリップみたいに。

 

そんなイベントになったらいいな、と思う。

 

そんなことを考えつつ、イベントの準備をしながら、夢小説を書いてみました
三部作ですが、せっかくなので、これから三週間続く金曜の再放送に合わせて、続く二回も出していこうと思います。
よければ、読んでみてください(タイトルは雅から拝借してます)

 

 

 

 

*ジェームズ視点から読むことをお勧めします。

 

→『不眠症の眠り姫』 ◆:ジェームズ視点:不眠症の眠り姫(前編)
             ◇:夢主視点:不眠症の眠り姫~ver.夢主(前編)

 

続きはまた来週の金曜夜に、更新します。

 

中編はこちらから→ジェームズ視点/夢主視点

後編はこちらからジェームズ視点/夢主視点 

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