みなさんは、好きなキャラのなりきりbotや、なりきりアカウントはフォローしてますか?

最近だと、「艦これ」の艦娘なりきりや、「進撃の巨人」のキャラたちのなりきりはよく目にします。もちろん、三次元の有名人のなりきりアカウントもたくさん存在しますよね。

 

この”なりきり”という文化――実は、Twitter時代に突然流行りだしたのではありません。

 

なりきりとはなにか

”なりきり”についての詳しい説明は、この記事にまとめてあります。

 

女の子ウェブの隠し味、「なりきり」の秘密に迫る!

 

が、簡単に要約すると……

 

なりきりとは、アニメやマンガ、ゲーム、芸能人などになりきって、会話をすること。イラストやマンガなどの二次創作コンテンツとは異なり、コミュニケーションしか存在しません。

 

チャットや掲示板だけでなく、HPやブログ、メルマガ、さらにはTwitterやLINEにも生息し、ユーザー(中の人)は女性が圧倒的に多いです。

(注:Twitter導入以後は男性もいると思います。艦これの「1日1ずつレベルアップする五十鈴bot」とか中の人は男性なのではないかと勝手に思い込んでます)

 

さらに女性ユーザーたちは、あえて男性キャラになりきる人が多く、男性キャラ同士でのコミュニケーションをします。会話を続けているうちに、彼ら(彼女たち)は恋愛関係になってしまうのです(しかも、男キャラ同士で)。メールエッチやチャエッチまでします。文通やオフ会もします。

 

 

 

0 :ねとぽよちゃん 2013年10月27日 20:20 ID:netpoyochan

……(゚Д゚)ハァ?

 

5 :名無しのねっとぽよく 2013年10月27日 21:32 ID:YNur6Rp00

また腐女子か。「ネット上の疑似彼氏とエッチなメールしてた」ってどんな変態だよ。

 

7 :名無しのねっとぽよく 2013年10月27日 21:32 ID:5o.h6cj80

なんでわざわざ異性のキャラになって、おしゃべりする必要があるの?

 

8 :名無しのねっとぽよく 2013年10月27日 21:32 ID:HXiLeKJz0

あーでも、教室とか会社とかで「○○さんってこういうキャラだから」って押しつけられたイメージからずれるようなことは言えないかも……。

家では「デュフウウウウウウウウウウウウウ、ロリ幼女最高!!!!!!!!」って言ってても、真面目で静かな人ってキャラでやってるしな。

 

14 :名無しのねっとぽよく 2013年10月27日 21:32 ID:uIS5zmc70

女とか男とかどうでもよくて、キャラが大事感

 

 

 

 

そんなみなさまの、(゚Д゚)ハァ?にお応えして――

 

ねとぽよSP3恋愛特集号に「キャラになりきるとき、なぜ人は恋愛するのか」というエッセイ的な文章を書きました。三万字を超えました。

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表紙はピグで八九寺真宵風のアイコンを作って、遊んでもらいました。一種のなりきり感……!

 

”なりきり”は今まで、隠れて育まれてきた文化です。ユーザーは検索避けを必死にして、HPにはパスをつけて、息を潜めて生息してきました。Twitter導入以降、みなさまの目にも留まるようになってきましたが、まだまだ嫌悪感のある人も少なくないと思います。

 

ですが、7年ほど前――私は、なりきりのヘビーユーザーで、なりきりのおかげで引きこもりから復活した経緯があります。このテーマを表に出すことへのためらいは今でもありますが、トランスジェンダー、日本芸能、キャラクター論、女性特有の創作文化、そしてメンヘラ(!)の視点からも、非常に語るべきことの多い重要な文化であると、この記事を書ききった今だからこそ、実感しています。

 

なりきりの謎を紐解く、五人のキーマン

この記事では、”なりきり”についての考えを深めるべく、いろんな人に会いに行きました。

 

その1 トランスジェンダー研究をしている、三橋順子さん

まずはじめに、トランスジェンダーの研究をしていらっしゃる、三橋順子さん。講談社現代新書から『女装と日本人』という本を出していて、ご本人は女装をしていて、男性から女性へのフルタイムのトランスジェンダーの方です。なりきりにおけるジェンダーやセクシュアリティの話に始まり、リアルとネット(バーチャル空間)における違いにまで、話は踏み込みます。

女装と日本人 (講談社現代新書)

 

「なりきりのことは全く知らなかったけど、ネットが普及したここ20年の間で、こんな形で自分と違う存在になりたいという欲望が表現されるようになったのかと、とても感心しました」

 

 女装する人やトランスジェンダーの人たちも、この欲望をずっと昔から抱えていたと彼女はいう。けれど、それをカジュアルに表現するのは困難だった。例えば、五十五年生まれの彼女が自分の性別に違和感を覚え始めたのは、二十一歳の頃。ところが、彼女が女装を初体験したのは、それから九年もの葛藤を経てのことだった。

 

「普段とは違う自分を設定すること自体が大変でしたね。例えば、ネカマはまるで詐欺の犯罪者のように扱われていました。実際、私の女装友達がPC通信をやっていたらネカマ呼ばわりされて、”ふざけんな、正真正銘、本物(のオカマ)だ!”と怒っていました(笑)」

(以下、引用はすべて本記事より)

 

 終わり際に、三橋さんは言った。

 

「ネット空間でのセクシャリティや恋愛の在り方が多様になっているのなら、それは次第に現実にもフィードバックしてくると思います。それを期待してます」

 

 ネットがなければ、なりきりは実現しなかったかもしれない――トランスジェンダーである彼女から話を聞く中で私が感じたのは、むしろネットが人間の古くからある欲望の発露の敷居を下げる装置だったということだ。男の娘の話になった時に、三橋さんが「男の娘って、とてもライトに女装してて、重いものを背負ってきた私たちにはちょっと悔しい。でも羨ましい……」とこぼしていたことが、この日もっとも印象的だった。ネットが普及させたイメージや欲望が、リアルの身体にも影響を与えていく。

 

 その2 放送作家の和田尚久さん

次に会いに行ったのは、放送作家の和田尚久さん。お笑い芸人の友近を例に、「モノマネ」と”なりきり”の違いについて指摘してくださったことをきっかけに、お話を伺ってきました。お笑いや宝塚、講談などの広範な日本芸能と、なりきりの関係について一緒に考えていきました。

落語の聴き方 楽しみ方 (ちくまプリマー新書)

 

松本さんは「いや、女性でもなりきりを使って世直しをしてきた人がいますよ」と、シンディ・シャーマンという女性アーティストの名を挙げた。

 

 彼女は、映画のワンシーンやパパラッチされた瞬間のように女優コスプレをして自画像を撮ることを芸術として発信している。シンディはこんなことも言っているらしい。

 

「もし、私がこの時代とこの場所に生まれていなければ、こうした表現をおこなうことはなかったでしょう。そして私がもし男なら、このような方法で、作品を生み出すことはなかったでしょう」

 

一途さんはそのときに、女優には、確かになりきり的に演技に没入していく人が多いと言っていた。なりきりだけでなく芸能の世界にも、言い訳のために、つまり自分の欲望のためだけに、演技することはあるのだろうか。質問してみた。

 

「自殺した落語家の桂枝雀は『自分のためだけに落語をしたい』と言って、実際やっていたようです。それを聞きつけてしまった近所の人が数人見ていたようですけど(笑)、僕はそれを、自分で煎じ薬を作ってるみたいだなぁって思う。自分しか読まない小説とか、写真とか、落語とかは薬みたいな効果がありますよね」

 

 その3 なりきりヘビーユーザーの二人・リリーさんとレゴラスさん

私だけのなりきり体験では話が偏ると考え、なりきりヘビーユーザーだった女性二人にも話を聞かせてもらいました。「擬似彼氏とコスプレしてオフ会」「リアル男子とのデートはあまり楽しくなくて、悲しい。甘い言葉を言うと嫌がられる……」と名言も連発。なりきりは、女の子に夢を見させてくれる空間です。

 

「でもね、ネットとリアルの違うところは、ネットの恋愛の方が気軽な関係を作れるところだと思う。〝手塚くん〟のことすごい好きだったんだけど、オフ会終わるたびに『次はいつ会えるんだ?』『どこに行こうか』とかしつこく誘われるようになってから、めんどくさいなーと思って離れちゃった」

 

「『お前はリアル彼女かよ!』と思っちゃった」とレゴラスさんは言い放ち、「それは重いねー。なりきりはめんどくさくないから、いいんじゃんね」とリリィさんも、うんうんとうなずく。

 

その4 精神科医の斎藤環さん

最後に、いろんな視点からなりきりについて考えてきた私は、精神科医の斎藤環先生に会いに、筑波大学まで行ってきました。

キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人(双書Zero)

斎藤環先生の本は、なりきりという視点を軸にして読むと、キャラクター論としても、メンヘラが多いなりきりユーザーの話としても、驚くほど面白いことが書かれており、どうしてもお会いしたかった一人です。

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――ただ一方で、なりきりって、女が男になって、男同士でイチャイチャするみたいな、ある種倒錯した空間です。正直なところ、なりきりは性別が関係ない空間だという印象もあるんです。自分自身、男の子の口調に憧れつつも、男の子になりたいというよりは、キャラになりたいと思っていた気がするんです。

 

斎藤環 (中略)すべてのコミュニケーションは、根底にはヘテロセクシズムがあるんです。たとえキャラとして愛されたいと思っていても、根底では恋愛願望につながっているし、それはヘテロセクシズムにつながる。いかに間接的な欲望の装いをしていても、そう見て良いと考えます。

 

――私は、実はある時に擬似恋愛を求めるなりきりをやめて、単に女の子同士の友情を求めるなりきりに移行したんです。

 

斎藤環 むしろ、友情と恋愛の間にはさほど区別がないというのが重要だと思いますよ。

 橋本治さんが、友情とはセックスのない恋愛であると言ってますね。これは、ゲイの人だから言えてしまうというのもあるでしょうが、至言だと思いますね。単に同性の身体ではセックスができないとか、その程度のことですよ。私は身体性のような歯止めがかからなければ、友情が恋愛に向かうのは必然だと思います。それこそ文通や手紙のようなところまでは行くでしょう、と思います。

 

なりきりにメンヘラが多い理由は? 

なりきりで引きこもりは治るのか? 

リアルとネットの恋愛に差はあるのか? 

友情と恋愛って切り離せるのか?

 

……そして、

 

キャラになりきるとき、なぜ人は恋愛するのか?

 

この文章のタイトルへの答えは、全てここに記されています。

 

なりきりは、ただのおしゃべりチャットとは違います。同じ趣味を持つ友人がほしいのでもなく、異性になりたいのでもないようです。「キャラになりきる」ことが重要です。Twitterの自分と、家にいる自分と、学校の自分は全部違います。

 

しかし、私はなぜこんなに夢中になってしまったのだろうか――その秘密は、リアルの恋愛とは全く異なる、ネット上での疑似恋愛にあると考えました。

この記事は、人がキャラになりたがる理由、そしてなぜ擬似恋愛に至るのかをひも解きます。

ネットを酸素のように摂取しているみなさまに読んでもらいたいです。

なりきりを体験してきた人に、ネットで疑似恋愛したことのある人に、メンヘラな人に、Twitterで裏アカ・サブアカを持ってる人、そしてなにより、リアルの人付き合いが上手くいかなくてネットに逃げたい人にも、読んでもらいたいです。

裏話ですが、この記事を書きながら、自分の黒歴史と正面切って向き合うので、何度も何度も絶望しましたw

自分はこんな欲望で恋愛を求めていたのか、インターネットは人を救ってくれないジャマイカ……と衝撃を受けました。ううう。

 

 

でも、その絶望に応える希望も見つけてあります。

すばらしい。自己啓発本の価値もあります(※ありません)。

インターネットは幸せを教えてくれたなぁ、と思っています。

 

  

これが掲載されている、ねとぽよSP3恋愛特集号は、

11/4(月・祝)の第17回文学フリマ Fホール二階カ-15~16で売っております!

 

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