みなさんは前略プロフィールをご存知でしょうか。日本最古のガラケー向けSNSのようなものです。

 

プロフで激しく自己紹介 – 前略プロフィール

 

 中高時代にパケホでガラケーをガンガン使っていた自分たちの世代の人間はほぼ全員よく知っていると思いますが、もっと上の世代はそうでもないらしいです。また、初めてのケータイはスマホでした、なんていう下の世代もおそらく知らないでしょうから、そろそろ我々も老害への仲間入りを果たすべく、太古のおもちゃの偉大さを語ろうと思います。

 

「前略プロフ」とはなにか

使われ方は2通り~内向けと外向け

 まず前略プロフがどういうものか説明しておくと、その名の通り、自分のプロフィールを一問一答形式で公開できるサービスです。モバイル端末での閲覧、更新を前提に作られているもので、パソコンからは見にくいことが特徴です。

 

スクリーンショット 2013-11-06 12.23.35

PCから見た「前略」

 

677446684999

スマホから見た「前略」

 

 自分の周りで前略が流行していたのは中2から高1にかけて、つまり2006年〜2009年前後でした。私は都内の中高一貫女子校に通っていたので別地域や別クラスタの事情は細かく知りませんが、少なくとも私たちにとっての最盛期は2000年代後半と考えていいでしょう。中1の頃はクラスの中で本当にごく一部のアーリーアダプター(もちろんギークではなく他校の文化祭によく遊びにいくような交友関係の広い子達ですよ)しか使っていませんでしたが、学年が上がるにつれて、やっていて当たり前の物になりました。高校にあがるとmixiが広まり、前略との両刀使いがデフォルトとなりました。

 

 この二つのサービスの使い分けは人によって違いました。誰でも見られる前略には顔写真を載せず、自分や友達のフルネームも明かさない。一方で、マイミクしか見ることのできないmixiで、よりプライベートな情報(プリクラや友人の名前の載った日記)を公開する。こういった、コミュニティ内部向けの使い方をしていたという子はたくさんいると思います。ですがガチ勢(もちろんネット廃人ではなくリア充です)は、mixiではなく前略で、コミュニティの外部に向けて、より多く自分の個人情報を公開していました。ここでいうコミュニティとは、学校のことです。コミュニティ外部向けの使い方をしていたリア充な子たちは、学校外の同年代の子達に向けて、自分のライフログを公開していました

 

GoogleのPageRankのようなカースト

 前略プロフの主な使い道は、自己紹介とリンクの二つに分かれます。自己紹介はサービス本来の使い方です。

 周りでは、プロフをしっかり書いている子はコミュニティー内部向けの使い方をしていることが多く、コミュニティー外部向けの使い方をしているガチ勢ほど、答えている質問項目の数は少なかったように思えます。ほとんどリンク帳としての役割しか果たしていませんでした。

 そこには例えば、友達の前略へのリンクが貼られていました。リンクが一つもない前略は珍しく、使い込んでいるユーザー程たくさんのリンクを貼っていたように思います。中には、わざわざ別ページにずらっと友達の学校名と一緒に前略へのリンクを貼っている子もいました。別に相手の個人情報を晒そうという悪意があってやっているのではなく、「こういう学校に友達がいるよ」「こんなに有名な子と友達だよ」ということを示しているだけです。有名な子はそれだけリンクを貼られていることも多かったし、有名な子へのリンクを貼ることで自分もそのクラスタへの仲間入り(仮)を果たしているようでした。その子のリアルに「○○ちゃんと2時間コムした〜」なんて、自分の名前がでてきたらもう最高。中には「私とコムしたってことリアルに書いて!」なんていうお願いをしていた子もいたそうです。なんだよもう。

 

pagerank

PageRankの概念図。実運用ではもっと複雑なアルゴリズムにして、スパムと戦ってるようですが……。

 

 これらは今思うと、Googleのページランク方式と同じでした参考。多くのリンクが貼られているページは重要度が高い。また、重要度が高いページにリンクを貼られているページも、重要度が高い。人間関係のアルゴリズムも同じのようですね。

 

“リアル”との組み合わせでFacebookのように機能

 もう一つ多かったのが、自分のリアルやブログへのリンクです。

 ”リアル”については、私たちの世代の女の子はともかく、もしかしたら年長者や男性には知らない人も多いかもしれません。当時は、ガラケーからメールで更新できるブログに自分のライフログを垂れ流し、”リアル”という名前を付けていました。「新しいつけま買った」とか「誰とどこで何時間喋った」とか「あの先生くそうざい」とか、メールでひたすら更新していました。要するにフィードのないTwitterやFacebookですね。

 

sukusyo

リアルの例。Twitterと喋ってる内容は、ほとんど変わりませんね。

 

 なので、友達のつぶやきや更新情報が自動的に流れてくることはありません。友達の前略を見るには、リンクを辿るかブックマークから飛ぶしか方法はないのです。また、運営から用意されている機能が少なく、「マイミク」や「友達」のように、知り合いのユーザーを登録する機能もなかったので、友達のリアルにコメントする時は必ず名前を打ち込んでいました。一方、前略が提供していたサービスはプロフ、ゲスブ(ゲストブック。各ユーザーごとのBBS)程度で、リアルやブログは他社のサービスへのリンクを貼られていることがほとんどでした。

 

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)

 

 つまり、前略だけだとただの自分語りで、リアルだけだと単なるミニブログだったのですが、そこに貼られているリンク先も合わせると、あたかもフィードのないFacebookのような働きをしていました。

 

「ゴシップガール」の要らない世界

ユーザーが有名人を生み出すアーキテクチャ

 では、こんな風にひたすらネット上に個人情報を晒して何をしていたのかというと、いわゆる“読モごっこ”だったのかなと思います。前略プロフは、管理者ではなく一般ユーザーが「有名人」を生み出していくアーキテクチャでした。事務所や編集者による「ゴリ推し」などはなく、ひたすらページランクとライフログで、自分自身の力で有名になっていくゲームだったと思います。

 つまり、「前略」という世界は、ゴシップガールの要らない世界なんですね。正直、Popteenに載ってるような読モと前略の有名人、どちらのブログを多く見ていたかというと、おそらく後者だと思います。クラスの中での知名度も、もしかしたら同じくらいだったかもしれません。前略見ない系の子は、Popteenとか読まない系の子だったので。

 

Popteen (ポップティーン) 2013年 07月号 雑誌

 

 有名な子がゲストブックや拍手で、知らない子から使っているメイク道具やよくいるお店を訪ねられて答えたり、リアルやブログに自分のファッションコーディネートやメイクを載せたり。そもそも読者モデルというのが、雑誌の中だけの存在ではなく、ショップでもそしてネットでも見ることができる存在でした。よく、「読者モデルは自分でもなれそうな身近な存在だから人気がある」と言われています。ですがそれは単に容姿の話ではなく、ライフスタイルや遊びも含めての話でした。

 大学生にはサークルの代表や読者モデルのように、わかりやすい有名人指標があります。ネットで言うとFacebookの友達数やフォロワー数でしょうか。それが、都内の中高生にとっては前略と文化祭でした。男女関係なく文化祭で知り合って、前略を教え合って、リンクを貼り合って、渋谷で偶然会ってしゃべる、みたいな。また、中高一貫の私立校に通っていた私たちの場合は、もちろん芸能活動なんてできるわけありませんでした。雑誌スナップに載れたとしても、その雑誌が職員室に持ち込まれたら退学です。でもネットならすぐに消せるし、そもそも大人には使い方がわからないでしょ、なんて思っていました。

 

 そう――実は前略やリアルには、大人からのヲチを避けるためのツールがたくさんありました。

 

 そもそもページ自体がモバイル端末で見られることを前提として作られていて、パソコンからは見づらい。実際には、私の通っていた学校では一部の教員がどこからか生徒の前略やリアルを見つけてパソコンの見づらい画面でヲチしていた、ということもありました。しかし、当時のリアルやブログサービスにはパソコンからのアクセスを禁止する設定もありました。もちろん鍵(閲覧用のパスワード)もつけられました。特に、アクセス解析の機能は素晴らしかったように思います。仲の良い友達同士でIPを教え合って登録できる、という今では信じられないような機能がありました。また、アクセスしてくる時間帯から先生だろうと判断できるパソコンのIPアドレスをアクセス禁止にすることもありました。

 

 そんな風に、大人VS子供の攻防は繰り返し行われていました。あぁなんて懐かしい戦争。

 

クラスタ内での「有名人」の知名度

 ただ、マスメディアに載っている読モたちが全国のJCJKに広く知られているのに対し、前略の有名人はやはり都内中高一貫女子校限定の知名度だったと思います。でも、そのクラスタの中ではマスメディアの有名人もネットメディアの有名人も同じくらい有名だったし、影響力があったのかなと思います。

 その理由として、都内で中学受験をしている子たちは、だいたい近隣にある中学の名前を知っていますし、その学校がどんな雰囲気なのかもなんとなく知っているというのがあります。同じ中学受験塾に通っていた友達が、いろんな学校に分散していったからです。軽く知っている外のコミュニティーにぱっと有名人が出てくると、とっても面白い。そしてその子が自分の学校の子や別の学校の子と遊んでいる様子を公開しているのをみるのは、もっと面白かったです。また、一応社会的な立場がある読モたちは、ネットで公開できる情報は限りがあるけど、一般の女子高生達のライフログはなんだって流せた。新しい化粧品やファッション、家族との喧嘩や人間関係のごちゃごちゃまで。

 JCJKの情報消費欲を満たせるのは、同じくJCJKだけだったのかなと思います。

 

「前略」の終わりとその後

 さて、私自身も、当時は休み時間も授業中も友達とスタバでだべっているときも、ずっと前略やmixiを見ていました。おそらくあれが、私のソーシャル全盛期です。でも、その後、高2あたりから受験勉強のために多くの人がネットから離れていきました。でも、それは別に飽きたのではなく、ただ受験勉強しなくちゃならなかったからです。

 当時の引き際は本当にきれいで、あっという間に「mixi放置します」「前略放置します」宣言が広まりました。友達がやり始めたから自分もやり始めただけなので、友達が辞めたら自分もやってる意味ないですもんね。それでも、ごく少数の出会い厨っぽいことをしていた子たちは残って、延々とmixiボイスを更新していたりしましたが、コミュニティ制度がなく出会いにくい前略からはほとんど撤退していきました(ちなみに私はそこでひとりネットから離れられず、大人と意識高い勢ばかりのTwitterに向かっていきました)

 

 

 一方、気になる「前略ガチ勢」たちのその後についてですが、これは人によって違う、としか言えません。受験がうまくいかなくてややグレてしまった子もいますし、逆に可愛くて勉強もできるエリート街道まっしぐらに進んだ子もいます。当時ソーシャルで繋がっていた子同士達はいまでも仲がいいのかな、と思ったのですが、どうやら大学の友達とウェイウェイするのに忙しいようで、当時のつながりは残ったライフログと一緒に「放置」されているようです。なんだかさみしい。

 ただ、先週Twitterで当時前略でブイブイ言わせていた子をまた一人見つけたのですが、なんと彼女は本物の読モになっていました。自分の力で有名になっていった子が、ついにマスコミに作られた読モと同じ知名度を得る。インターネット的いい話ですね。

 

 

 【追記 2013 11/11】この記事への反応をまとめました→同世代からCEOの人まで 前略プロフ記事への反応をまとめてみた | ねとぽよ

=====

この記事のような、女の子のネット文化に興味のある方は、

「ねとぽよSP1 女の子ウェブ号」も合わせてご覧ください! auの思い出から同盟やリング、夢小説や歌詞画まで。様々な文化の紹介と分析が載っています。

20121210002352

 

 

商品一覧 | ねとぽよショップ

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加