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「バンギャルになりたい」はネット以降の現象? ~バンギャルちゃんとインターネットの関係  蟹めんま×藤谷千明×ねとぽよ座談会(1/3) 

 

 Yahoo!ジオシティーズ、HP、絵チャ、前略、そして匿名掲示板――バンギャルちゃんが育った時代は、インターネットが日本に普及していく時代。そんなバンギャルとインターネットの歴史について、漫画『バンギャルちゃんの日常』の作者・蟹めんまさんと、音楽ライターの藤谷千明さんと語り合った座談会の、第2回をお届けします。

バンギャルちゃんの日常 バンギャルちゃんの日常 2

 今回から、ついにバンギャルちゃんとインターネットの歴史が語られます。HP時代の黎明期から始まって、2ちゃんねるの台頭、そしてニコニコ動画の登場……バンギャルの文化はインターネットでどんな風に変わったのでしょうか。「teacup」や「魔法のiらんど」など、懐かしい名前が頻出するこの座談会で、あの懐かしい時代に戻りましょう(暗黒微笑

 

 

 【構成:ねとぽよ】

Yahoo!ジオシティーズ、teacup…HPの時代

 

――そろそろインターネットとバンギャルの話をしたいです。

 

藤谷千明 最初に個人サイトを作ったのは、98年の秋です。最初に買ったPCはNECのVALUESTAR-NX。「GeoCities」で個人サイトを作ったりしていました。

 

蟹めんま (※)ですね、塩町(笑)!   (※ GeoCities(現:Yahoo!ジオシティーズ)のネットスラングによる俗称)

 

藤谷千明 いや、まだそんなスラングもジャーゴンも無かった時代かな。匿名掲示版も「2ちゃんねる」じゃなくって「あめぞう」の時代で、たしかヴィジュアル系の板もなくて、芸能板だったか、邦楽板だったかな? もう記憶が曖昧なくらいです。

 

蟹めんま 私は、HPは2000年代に入ってからですね。

 

藤谷千明 当時なら、ゆいちゃっとに、teacup掲示板かな。まあ、これはバンギャルに限ったことではないでしょうけど。

 

――どういうコンテンツがあったんですか?

 

蟹めんま 私はコスプレ写真と、あとバンドマンの似顔絵のイラストサイトをよく見てました。

 

藤谷千明 私の場合は、基本はライブレポでしたね。その頃は回線も遅かったんで、画像を読みこむのも一苦労だったんですよ。

 

――ちなみに、二次創作は……。

 

藤谷千明 pixivに似顔絵やイラストライブレポ載せてる人はよく見かけますけど、同人系になると昔よりは減ったのかなあ……コミケのスペースも昔より随分と減ってますし。単純に地下に潜ってるだけかもしれませんけど。

 

なおりん 今のバンドは、ネットでもほとんど見ないですね。

 

――蟹めんまさんは、本でちらっとネットのことを書かれてましたよね。

 

蟹めんま 有名なバンギャルさんの個人サイトに行っていたのですが、そこは金曜の深夜に管理人さんがチャットルームに降臨するんです。親に「早く寝ろ」と怒られながら、PCに張り付いてましたね。

 

――その頃にはファンの女の子同士の間で、ネットを通じたカリスマバンギャルが登場し始めていたんですね。

 

藤谷千明 ゼロ年代半ばには、有名なサイト管理人が出始めていたような。

 

蟹めんま コスプレのカリスマ、イラストのカリスマ、文章のカリスマ、ライブレポのカリスマ、と各方面にカリスマがいるんですよ。それを見ていると、その人やその周囲の人とお近づきになりたいな、と思うんですね。

 

――そこでの繋がり方は、やはり同盟やリングですか?

 

蟹めんま リングはありましたね。あとは、相互リンクとか。自前のHPを構えている子が凄く多かったので、友達同士はみんな相互リンクしてましたね。

 

 

前略がまだ厨二病だった頃…「前略プロフィール」の時代

 

藤谷千明 で、そしたら、そのうちにみんな「前略」を使い出したんですよ

 

なおりん え!? そこで前略に行くんですか?

 

――たぶん、なおりん世代の知ってる前略プロフより、かなり前の時代ですね。

 

藤谷千明 気がついたら、自分より少し若い子がみんな「前略プロフィール」と「魔法のiらんど」をやってたんです。あれは2004、5年くらいだったかな……? でもその前身の「CGIBOY」の日記や掲示板はもっと前から使われていたと思います。

 

蟹めんま 私は、まさにそうでした。

 

藤谷千明 バンギャルだけでなく、インディーズバンドの公式サイトが「魔法のiらんど」ということも多かったです。前略を使っているメンバーも結構いたような。あと人気のあったWEBサービスといえば、私の周囲のバンギャルはよく「メモライズ」を使っていましたね。メモライズが04年にライブドアに吸収されると、「ヤプログ」に行く子が多かったかな。

 

蟹めんま 私は……「エンピツ」とか使ってましたね。デザインやフォントが可愛いくて、ちょっとHTMLをいじれると色々と出来るんです。

 

なおりん へえええ。初めて知りました。「リアル」みたいな使い方ですか?

 

藤谷千明 ぜんぜん違いますね。なんて言ったらいいのか、更新しやすくてデザインがいろいろ弄れる日記レンタルサービスですね。

 

蟹めんま 私の頃は、HTMLがわからない子は、とりあえず「魔法のiらんど」。ちょっと使える子は、ジオシティーズやFC2。で、一番すごい子はロリポップに行く感じだったかなあ。

 

――前略やiらんどって、あまりオタクっぽいイメージはないですよね。

 

藤谷千明 いやいや! さっきも言ったように自分の周りではバンギャルと、あとは同人やコスプレやってる人が使ってるイメージがあったので、逆に我々はその3年後くらいに「前略がギャル層に受けている」と聞いて「え……あの前略が?」となったんですよ(笑)。

 

なおりん ひえええ(笑)。面白い。

 

――なおりん世代にとっての前略は、リア充の使うメディアだよね。

 

蟹めんま 当時の前略は、もうね。性別欄に「雌」とか。血液型は「錯乱状態タイプA」、とか(笑)

 

藤谷千明 とりあえず「生物学上は女」とか書いて(笑)

 

蟹めんま プロフィールページに、「詳しくはこちら」と前略を貼って、前略には「さらに詳しくはこちら」と書いて、「100の質問」を貼るんですよね。「バンギャルへの100の質問」とかあって。ああ、いろいろ思い出したら恥ずかしくて体温上がってきた……(笑)

 

藤谷千明 「バンギャル経験値」とかもあったよね。「100の質問」の亜種なんですけど。体験したものを○☓で答えていくもの。mixiでも流行っていたような。

 

なおりん 私がアメブロを使ってた時代にも、「詳しくはこちら」と前略を貼る習慣は、ぎりぎりまだ残ってましたね(笑)

 

 

2ちゃんねるが変えたもの

 

――で、やっぱりゼロ年代のネット文化を話すなら、2ch登場以降の話はしないといけないと思います。蟹めんまさんは本の中で、2chが普及した頃を、「殺伐期」と書かれていました。それはやっぱり「晒し」とか……。

 

蟹めんま そうですね……。

 

――逆に個人サイトのBBSでは、そういうのはなかったんですか?

 

藤谷千明 当時はネットをやってる人自体が少なかった上に、その中でさらにヴィジュアル系バンドが好きとなると本当にレアだから、もう「こんなところで会えるなんて~」という感じですよ。98年くらいは、プロフに「黒夢が好き」と書いてる人は、もう全員友達という勢いで生きてましたよ、私は。

 もちろん、アングラ色は今よりももっと強かったから、ひどいところは極端に荒れてるけど、そういうところに行かなければ何もないというか。個人サイトと匿名掲示板の今より住み分けはずっと厳しかった。その頃は自分のサイトの掲示板で2ch用語使う人に「そういう言葉を使うのはやめてください」って、注意してましたもん、今では考えられない(笑)。

 

蟹めんま 2000年代の最初も、そんな感じでした。だから、2chの叩きスレを見た時は、本当にショックでした。

 

――2chとかの匿名掲示板の登場で、どうコミュニティは変化しましたか?

 

蟹めんま いやもう、大きく変わりましたよ。まず、「箱の恥はかき捨て」ではなくなりました。何かをやらかすと、そのバンドのライブに行けなくなるまで追い込まれるので、お行儀良くなりました。ダイブとかが減ったのも、危険行為をやめようという心掛けや、バンド側が禁止したからというのはもちろんですが、誰が犯人かをネット上ですぐに特定されてしまうからというのもあると思います。

 

なおりん 私が行くような小さい箱だと、いわゆるゴスロリを着ているようなバンギャルなんてほとんど絶滅危惧種で、私含めて普通の服装の方ばかりなのですが、それは目立ちたくなかったからでしょうね。まぁヘアメしたり、コスプレしたりで、結局しっかり目立っているのですが(笑)

 

蟹めんま 髪の毛をピンクにしていると、「ピンク頭」ですぐに誰か特定されちゃいますから、特徴をなくしてその他大勢にまぎれている方が安全っていうのはありますね。

 

――そういえば、眼帯をつけているみたいな、よくイラストに出てくるようなバンギャルのファッションって、実はもう見かけないと聞いたりするのですが……。

 

なおりん 今でも箱が大きくなるほど、増える気はしますけどね。ただ、「拳系」ならともかく、えんそくのようなネタ系バンドも増えてきてるので、昔のようなファッションを必ずしもする必要はないというのは、ありますね。

 

 

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藤谷千明 服装でバンドの世界観を表現するより、振り付けで楽曲の世界観を表現したり、一体感を求める方向に行ってる面があるかなと思います。最近は振り付けが複雑化してきたので、昔のような鋲のついた服や厚底ブーツのようなファッションだと、単純にぶつかったり足を踏んだりすると危ないというのもあるんじゃないですかね。

 

蟹めんま それにもネットの影響がまさにあって、安全に配慮した服を着てこないと、危険人物としてネット上で特定されてしまいますからね

 

――なんか匿名掲示板って、バンギャル文化にとてつもなく大きな影響を与えてませんか?

 

なおりん いや、そうですよ。

 

藤谷千明 相互監視社会になったのかなあ。でも自分自身がお二人のおっしゃるようなことを、リアルタイムでそれをあまり体験してなくて。なぜかというと基本的に90年代の大御所V系バンドは2chでは邦楽扱いだったので、2chで情報を探す時は邦楽板を見ていたので……。2chだから色々な人がいたけど、そもそもファンの分母が多いから、ファンの固有名詞が出ても誰が誰やらというような。単純にああいう叩きや晒しって、「知ってる人」が出てこないと、正直に言って興味も湧かないじゃないですか

 

――それはそうなんですよね。僕も、たぬきのそういうスレッドをいくつか見せてもらったんですけど、よくわからなくて……。男が集まる2chの専門板での攻撃みたいに、言葉を駆使して叩いて晒しあげる感じでもないし。パッと見、淡々とレスが並んでるなあ、と。

 

 

ニコニコ動画で振り付け動画うp 動画サイトの登場

 

――ところで、さっき話に出た踊りや振り付けの起源って、どこにあったんでしょうか? 「Xジャンプ」のように、昔からあったのだとは思いますが。

 

藤谷千明 たぶん、どこのバンドもやるようになったのは、せいぜいこの10年くらいだと思いますね

 

なおりん え、そうなんですか!

 

藤谷千明 もちろん、90年代にもヘドバンや手扇子はあったし、バンドごとのものはあったんですけど。例えば、PIERROTはスタジアムクラスのライブでも一糸乱れぬフリがすごいと話題になってたり、フリが複雑すぎて「手話状態」になってるバンドもいたと聞いていますが、自分自身が当時行ったことのある大抵のバンドはフリはなかったような……。

 

――振り付けはメンバーが決めるんですか?

 

藤谷千明 ファンから出てくる場合もあれば、メンバーが振り付け動画を動画サイトに上げるようなケースもあります。最近だと己龍やゴールデンボンバーの振り付け動画が有名なのかな。

 

なおりん 私の場合は、己龍がニコニコ動画にアップしていたのを見たのが、初めてでした。ああいう動画のお陰で、地方の人が振り付けを覚えられるようになったんですよ。動画サイトの登場が、地方と都市の溝を埋めた印象があります。

 

蟹めんま 昔から、地方の人も振り付けをみんなで覚えたりはしてたんですよ。でも、やっぱり動画だと覚えやすい。当時も、SHOXXやブレイクアウトのライブ映像がテレビで流れるとみんなそれを一斉に見るんです。それで一気に広まる。そうなるともう、そこからは振り付けを知らない人間はニワカって呼ばれちゃう(苦笑)
 ちなみに、メンバーによる振り付けレクチャー動画をいち早く始めたのは、Psycho le Cémuだと思うんですが……。

 

藤谷千明 そうそう、Psycho le Cémuだと思う。
 フリについては、90年代からずっと定期的に議論になっていたというか、昔は「宗教みたいで気持ち悪い」とインタビューで言うメンバーもいましたし。やっぱり自由にノる「ロックバンド」然としたライブをやりたいメンバーは、ファンがライブ中に一斉に揃った反応をするのを嫌がるんじゃないですかね。自由にノるのを強要するのも、すでに自由じゃない気がするんですけどね。
 ちなみに遡ると、ジャパメタ世代の人から聞いた話では、80年代にもすでにフリらしきものはファンの間であったとか。

 

――その辺りの歴史は、本格的につなげていくと面白そうですね。

 

 

 

 次回は、最後となる3回め。いよいよバンギャルたちにもTwitterとアメブロがやってきます!!
 お楽しみに。

 

そしてTwitterとアメーバがやってきた ~バンギャルちゃんとインターネットの関係 蟹めんま×藤谷千明×ねとぽよ座談会(3/3) | ねとぽよ

 

 

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