バンギャルちゃんが育った時代は、インターネットが日本に普及していく時代。そんなバンギャルとインターネットの歴史について、漫画『バンギャルちゃんの日常』の作者・蟹めんまさんと、音楽ライターの藤谷千明さんと語り合った座談会も、今回で最後となりました。

 

バンギャルちゃんの日常 バンギャルちゃんの日常 2

 

 今回は、Twitterやアメーバの登場が、バンギャルの文化に与えた影響を語り合います。ゴールデンボンバーがお茶の間で人気を博している昨今の状況につながるお話になります。私たちの時代のバンギャル文化は、一体どんなものなのでしょうか。

 

 

 

【構成:ねとぽよ】

Twitterよりアメーバなうだった

 

――Twitterの影響は、どうでした?

 

なおりん バンギャルはTwitterが入ってくるのが遅かったんですよ。むしろ、アメーバなうをやってましたね。

 

藤谷千明 私は2008年くらいからアカウント持ってたんですけど、最初は少数のバンギャルでほそぼそと「バンギャルクラスタ」みたいなものを形成していたところに、世間的にTwitterが流行り始めて、有名バンドマンがアカウントを取得するようになると、そこからファンが大量に流入していった的な……。数年前は「どこどこの誰々がTwitterに来た!」とよく話題になっていたような。

 

なおりん あ、懐かしいですね。

 

――どんな感じのコミュニケーションをしているんですか?

 

藤谷千明 基本はライブや楽曲の感想とか、それに「こんな〜〜は嫌だ」的な大喜利をハッシュタグでやったり。あるあるネタが好きなんですよね。

 

 

アメーバの芸能人戦略が与えた影響

 

――で、アメーバですね。なおりんは、2009年からバンギャル本格化だから、まさにアメブロの芸能人戦略と同時期に、入った感じだよね。

 

なおりん ブログが出てきて、バンドマンが何をしているかがすごく見えやすくなりましたね。

 

藤谷千明 アメーバ公式のヴィジュアル系ブログを集めた「アメびじゅ」というポータルサイトもありますね。あれで「ヴィジュアル系バンドやるなら、とりあえずアメーバ」みたいなイメージができたのでは。

 

蟹めんま 私もそうですね。ただ、あの当時、そもそもブログといえばアメブロ、という空気がありましたよね。矢口真里さんがCMをやっていたりして。

 

――「シンデレラペタ」の存在とか聞くんですよね。

 

シンデレラペタとは – はてなキーワード

 

藤谷千明 シンペタは私も自分ではやったことないです(笑)。若い子が「シンペタが〜」とか言ってたので「なにそれ?」と教えてもらった感じです。面白い文化ですよね。

 

なおりん 私はめちゃくちゃやってました。0時になったら待機してました

 

――アメーバで、ファンとメンバーの距離が近くなった感じはやっぱりあるんですか?

 

なおりん いや、めちゃくちゃ近くなりましたよ。ライブ終了後に質問を書いたら、ブログ記事の中で、エアリプみたいに質問への回答が書いてあって、「おおお」と喜んだりとか。

 

藤谷千明 Q&A的に質問への解答を返してくれたりしますね。最近はTwitterでファンへのリプ返しをするバンドマンも増えましたし。憧れのバンドマンから反応が貰えるなんて、ラジオでハガキが読まれるくらいだった時代では考えられないことですよ。

 

アメピグとバンギャル

 

なおりん 皆さんがアメーバをそんなに使ってないことに、いま驚いてます。

 

蟹めんま ただ、思い返すとあの時期、私は結構アメーバでピグ釣りをやってるんですよ。

 

なおりん バンギャルはよくやってましたね。公式でやってるバンドもあったし。私もピグ廃でした。

 

藤谷千明 私もピグは思い出深いですね。その頃には既にライターをやっていて、流行の勉強のために、というので始めたのですけど。Vの広場とかVの森とかもありましたね。
 私は当時「ピグライフ」にハマっていて、色々やっていると、バンギャル同士だけでなく、バンドのメンバーも水を返してくれたりすることがあったんです。それでその人の部屋を見に行くとめっちゃ凝ってたり、ハードなクエストをクリアしないともらえないアイテムがあったりする。そうすると、自分もさんざんハマってるくせに、「この人、バンドは大丈夫なの」と心配になる(笑)。

 

蟹めんま サイバーエージェントさんは、バンギャルのツボを突くのが上手かったんですよ。the GazettE のREITAさんのトレードマークである鼻の布を売ったり、ギターを売ったりして。実は、私のピグの部屋は、ライブハウス仕様なんですね。マイクとか置いてあって。人が来たりすると、一緒にモッシュするんですよ。

 

なおりん 超やる! 超やる! Skypeしながら、ピグでモッシュとかしてました。

 

――ピグって、「なんでこんなのあるんだろう?」というアイテムが結構あったけど……なるほど。そういう使われ方をするんですね。

 

藤谷千明 あと、お辞儀が「折りたたみ」っぽいじゃない。

 

蟹めんま そうそう。あと、わーっと喜ぶのが「咲き」っぽい。だから、舞台に誰か置いて、みんなでやってましたね。

 

 

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なおりん バンギャルのポーズって、ピグで全部再現できるんですよね。

 

――じゃあ、今回はリアルの写真撮影なしで、みんなでピグ撮影会にしましょうか。

 

なおりん やりたい!

 

藤谷千明 いいですね。

 

蟹めんま (笑)

 

(※ 編注:この会話で、今回の記事の写真はピグになりました)

 

 

「やっぱりツイキャスなのかなあ」 最近のV系ネット事情

 

――ちなみに、最近はV系周りだと何のサービスがアツイんですか?

 

藤谷千明 やっぱり「ツイキャス」なのかなあ。バンドマンがツアーの車移動中にツイキャスやってるのを見たことありますね。あと、新しい流行りというわけじゃないけど、みんな意外とmixi退会してないですよね(笑)。世間的にはmixiは廃れているという扱いですが、やっぱりチケット譲渡関連はは未だにmixiコミュが便利なので。

 

なおりん ニコ生のライブ中継も増えてますよね。

 

蟹めんま あれは……私が中学生の頃だったら、もうかじりついて見ていたでしょうね。好きなバンドの時は、部屋の中を暗くしてパソコンも全画面表示にして、持つものを全部身につけて、部屋の中を上手にモッシュしてる

 

藤谷千明 すごーい。

 

蟹めんま たぶん、その写真がありますね。曲の合間に「888888888」(※)と押してます。 (※ニコニコ動画内で使われる言葉。拍手の意味)

 

 

ニコ生ライブ
収録後、蟹めんまさんに写真をいただきました。「手につけてるのは、フラッシュリングですね」(蟹めんま)

 

 

――ドワンゴは、実はV系には強いんですよね。

 

最後に

 

――ところで、ねとぽよでこの企画をやりたいと思ったのは、なおりんから「一番好きだったバンドのCDを、ラストライブの日になって、初めて買った」と聞いていたからなんですよ。

 

なおりん 全部知ってたし、どの曲も乗れるし、最前でガンガンやってたんですけど、そのバンドのCDを買ったのは最後の日でした。その夜に、一気にまとめ買い。

 

藤谷千明 ……えっ?

 

なおりん 本当に、ただただそのバンドのバンギャルのコミュニティが好きだったんですよ。音楽は重要じゃなくて、ぶっちゃけメンバーも格好いいと思ったことはなくて、むしろけなしてたくらいで(笑)

 

蟹めんま おもしろーい。「けなし愛」というやつですね。

 

――彼女は19歳なんで、ネット体験で言うと、ニコ動が中2の頃に直撃して、ケータイで前略や2chまとめを読んで育ったような世代です。本当にコミュニティそのものがコンテンツになってるんだなあ、と思って。X JAPANやLUNA SEAの時代から、なぜ現在のようになったのかが、今日の座談会で少し見えた気がしました。

 

なおりん 私の中では、バンギャルの楽しさというのは、みんなでメンバーを推す楽しさでした。例えば、AKB48のあっちゃんを、みんな「可愛くない」と言いながら、でも、どんどん押し上げていって、育てたじゃないですか。あの楽しさに近いし、実際に私の周囲ではその後、地下アイドルのドルヲタに流れた女の子も多いんです。お二人は、ヴィジュアル系やバンギャルの魅力って何だと思いますか?

 

藤谷千明 インディーズシーンは90年代から「育てる」感覚の人は多かったみたいなんですが、昔はドームやホールクラスのバンドが多かったから、手の届かない人……極端な言い方をすると、メンバーやバンドは神様みたいな存在というか。現在みたいに「ネ申()」みたいなのじゃなくて、ガチの神。対象を馬鹿にされると本気で怒ったり泣いたちゃうような。それ故に熱いんだけど妄信的なところもあるような。90年代はそういう楽しみ方をするファンが多かったように思えます。

 

蟹めんま 私は、みんなが一斉に「才能の無駄遣い」をしている感じが好きですね。バンギャルになってから、毎日がずっと文化祭みたいなんです。ライブだけじゃなくて、絵や裁縫や色んなところで参加できるじゃないですか。バンドマンとの距離で言うと、中学生の頃は藤谷さんの「崇拝」に近かったけど、マイナーなインディーズに行きだしてからは、育てる楽しさもありましたね。当時はバンドマンが物販に出てくる文化はなかったんで、今ほど距離は近くなかったですけどね。

 

――じゃあ、最後に今回の座談会を企画したなおりんから、感想を一言。

 

なおりん 『バンギャルちゃんの日常』を読んで、地方と都市の差があっても共感できる部分が多いなと思っていたんです。だけど、話してみたら、特に世代差の部分で大きく違う。見ていたバンド、見ていたライブ、使っていたサイトで、全然景色が違ってくる。そこがすごく驚いたし、めちゃくちゃ面白いなと思いました。今日は、本当にありがとうございました。

 

 

 

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 (おしまい)

 

 

 最後に1つ告知です。

 今日2013年12月6日発売の『ダ・ヴィンチ』で、付録についてくるコミックエッセイ専門誌『別ダ』にて、『バンギャルちゃんの日常』が紹介されているそうです。見てみると、作家・書店員・書評家がおすすめの作品を紹介する「このコミックエッセイがいいね!」ランキングで見事6位タイに、そして蟹めんまさん自身も作家別ランキングで8位タイにランクインしていました。興味のある方は、ぜひ書店に足を運んでみてください。

バンギャルちゃんの日常 2

 

 

 

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