『帝国魔導院決闘科』(以下、『決闘科』)というフリーゲームをご存知ですか?

 

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帝国魔導院決闘科のDLページ

 

このゲームは、フリーゲームのwebコンテスト「WOLF RPGエディターコンテスト」(以下、ウディコン)に投稿された全87作品の中で、総合グランプリを獲得した作品です。今回は『決闘科』を制作した、「川崎部」にインタビューしてきました。前編とあわせて、ご覧ください。

 

ウディコン1位作品『帝国魔導院決闘科』制作の裏側に迫る――ゲーム制作集団「川崎部」に1万字インタビューしてみた(前編)

 

電源ゲームと非電源ゲームを越境する

『決闘科』はフリーゲームだからよかった

メイベル 今回ウディコンでグランプリを頂けたのは、二つ理由があるのかなと思っています。一つ目は、ターゲットを絞ったから。ウディコンは五回目の開催だったので、どんなプレイヤーが多いのか、だいたい傾向が見えてきました。それを踏まえて、自分たちの強みを活かせるプレイヤーにターゲットに絞ったのが、功を奏したのかもしれません。

 二つ目の理由は、『決闘科』は、フリーゲームだからよかったと思います。無料で遊べるし、細かいルールもシステムが補助してくれて簡単だし。デジタルゲームはやればできます。

 それに対して、非電源ゲームはプレイヤーが定着しにくいんです。プレイするまでに、「買う→ルールを理解する→人を集める→プレイする」と長ったらしいプロセスを踏まないといけないんですよね。しかも、ルールは、自分たちで全て理解しないとダメ。非電源ゲームは、めんどくさいんです。

りるむる 非電源ゲームのめんどうさが理由で、非電源ゲームを作ろうと思った人が、電源ゲーム制作に転向したりしてますよ。

 

――非電源ゲームが大好きな「川崎部」にとっては、その流れは避けたいですよね。非電源ゲームの敷居を下げるにはどうしたらいいのでしょうか?

メイベル ルールを分かりやすくすることが重要です。面白くするために、新たなルールを足すのはいい。だけど、ルールブックを読む労力が生まれてしまうリスクも考えなければいけません。逆に、既存のゲームで使われているルールを応用してあげるだけなら、ユーザーの負担は減ります。このバランスが大事ですね。

りるむる ちなみに、『決闘科』は非電源ゲームの難点を、全く逆の発想で捉えてみました。電源ゲームの簡単さを活かして、ルールは自分で覚えてもらうデザインにしました。あえてハードルを高めに設定したんです。チュートリアルは用意していますけど、他の電源ゲームに比べて、「ルールの理解」と「試行錯誤」を求められます。これは、「川崎部」が非電源ゲーム好きだから、実現しました。

メイベル 電源ゲームなら、説明書を一から読まなくてもプレイできますよね。失敗する中で、「あーこういうルールなのね」と理解していくじゃないですか。『決闘科』は、それを活かして、非電源ゲームの要素を取り入れました。チュートリアルの他に、エラーメッセージからも、ルールを学べるようにしています。たとえば、戦術値100のプレイヤーが戦術値110の敵に攻撃を仕掛けると、「戦術対決に失敗」とメッセージが表示されます。

りるむる 「負ける」ことが、一番大事なんです。負けることで、ルールを理解して、対策を練る――それから再戦したら、驚くほど簡単に勝てるようになっているはずです。制作者としては、こうやって、試行錯誤しながらクリアしていくことを想定しています。とはいえ、普通のRPGみたいに、レベルを上げて、ハック&スラッシュもできるんですけどね。

 

――たしかに『決闘科』は、プレイスタイルが選べますよね。頭脳戦とレベル上げを自由に選べて面白かったです。

りるむる レベルを上げて、物理で倒す。『帝国魔導院決闘科』は、知恵の輪だけど、引きちぎってしまってもいい――そんなゲームを目指しました。

 

「数値」で、ゲームの本質に迫る

――他にも、『決闘科』のゲームデザインで挑戦したことはありますか?

りるむる 数字だけでゲームを表現することです。というのも、わたしが以前プレイしたゲームで、衝撃を受けたものがあったんですね。それが、数値の増減だけで成立するゲームだったんです。グラフィック・UIなどを削り、ゲームの本質を突き詰めていくとこうなるんだなと印象に残ったんですよ。

『決闘科』は、そのデザインを参考にしました。ゲームデザインをシンプルにしたので、「今どんな戦いが繰り広げられているのか」といったストーリーの部分は、プレイヤーの想像に任せる仕組みにしています。

早川 プレイヤーが「ある」と言ったら、そのシーンは「ある」んです。こちらがイメージを押し付けないように、世界観を作り上げていきました。

 

――ゲームを徹底的にシンプルに捉える作品が増えてきましたね。最近だと、『cookie clicker』が挙げられますね

 

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一時期Twitterで話題になった、「cookie clicker」。もはや懐かしい。

 

「川崎部」の今後について

――ところで、みなさんは普段、何をされているんですか?

メイベル え、ゲーム(笑)。

 

――いや、日常生活ではなくて(笑)。こんなにゲームやグラフィックを作れる方々なので、本職は何をしているのか気になりました。

早川 もしそれを知りたいなら、私たちの個人好感度を上げてください(笑)。

 

――みなさんを「攻略」することが必要になるわけですね……。今日は残念ながら時間が足りないので、その代わりに、近年プレイしたゲームの中で、印象的な作品を教えてください。

早川 『ファイアーエムブレム覚醒』『彼岸花の咲く夜に』『魔王物語物語』『イストワール』『ever17』ですね。

りるむる 『Gravity Daze』『ガンスリンガーストラトス』『双葉の歌姫』『魔王物語物語』とか。フリーゲームの名作である『Ruina 〜廃都の物語〜』はよかったです。まさにデジタルゲームに非電源ゲームの要素を持ち込んだゲームでしたね。

 

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「Ruina 〜廃都の物語〜」

 

――ちなみに、ゲーム以外に影響を受けた作品はありましたか?

早川 『境界線上のホライゾン』は、とても影響を受けました。キャラクターの配分でとても参考にしています。川上捻さんの作品は、ゲームっぽいですよね。

 

今後の川崎部

――それでは最後に、「川崎部」の今後の活動について、教えてください。

りるむる ゲームバランス関連のテストは、張り切ってお手伝いしていきたいです。こういうゲーム作りたいから、手伝ってほしい!」という方がいましたら、ぜひお声掛けください。自分で作業しなくていいテストは、もう最高ですね。人のゲームでメシが美味い(笑)。

 

――非電源ゲームと電源ゲームのどちらに注力していくかは、決まっているんですか?

りるむる 作るゲームによると思いますね。システムに頼らなくてもプレイできるゲームなら、非電源ゲーム。逆に、システムに頼ったほうがいいなら電源ゲーム、と必要に合わせて変えていくと思います。ゲームを作るときは、システムに適した形式を使い分けていくことが大事だと思ってます。

 

――どちらにも親しみのある「川崎部」ならではの発想ですね。本日は、長い間ありがとうございました。今後のご活躍も応援しております。

(了)

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他にもウディコン紹介記事を掲載しています。ぜひ、お読みください。

 

 

 

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