突然ですが、このグラフをご覧ください。これは、Googleトレンドで「テラスハウス」を検索した結果です。昨年の「Yahoo!検索ワードランキング・テレビ番組部門」で、『あまちゃん』『半沢直樹』に次いで、3位を記録した「テラスハウス」。メンバーであるミュージシャンの永谷真絵(chay)さんは、初めての放送のあと、Twitterのフォロワー数が一晩で400人から7万人に増え、公式ブログも急上昇ランキング1位を獲得するなど、テラスハウスの人気が急上昇しています。

 テラスハウスとは、選ばれた男女6人が、海沿いのおしゃれなシェアハウスで共同生活する様子に迫る番組です。初期メンバーとして、シェアハウス「渋家(シブハウス)」の元住人であるちゃんもも◎さんAKB48の北原里英さんが参加し、話題になりましたね。Twitterの反応を見ていると、比較的女性の視聴者が多い印象があります。JCやJKなどの若い女の子から、主婦層も反応していて、世代は幅広く、最近は男性の視聴者も増えているようです。

 

 

 かくいう私は、最初は見え見えのやらせ番組だと思ってずっと避けていました。しかし、偶然放送を見てしまったときに、その面白さに気付いて、愕然としました。今回は、その面白さの理由を、インターネットから解き明かしたいと思います。「どうせ頭悪い人向けコンテンツでしょ?」って思っていると損しますよ!

 

テラスハウスとあいのりは違うんです

 テラスハウスを「あいのりの二番煎じ」だと思い込んでいる人も多いと思います。確かに、二つの番組の放送時間は同じですし、内容の面でも、見知らぬ男女が共同生活をする中で人間関係を育んでいく様子を描くという点が全く同じです。制作側もポストあいのりを狙っているように思えます。ただ、決定的な違いが一つあります。それは、あいのりでは旅の過程で「自分探し」をするのに対して、テラスハウスでは一軒家での生活で「自分作り」をしているのです。

 あいのりのメンバーたちは、日常生活の中で社会に埋もれてしまったがために、「本当の自分」を探すためにラブワゴンに乗って旅に出ます。そんな彼らの人気が伸びるのは、旅を終えたあとです。あいのりを通じて、ようやく見つけた「自分」の個性を活かし、活躍していました。今や有名ブロガーとなった桃さんや、政治家となった「総理」こと横粂勝仁さんが分かりやすい例です。

 一方で、テラスハウスのメンバーは、すでに自分の目標を持っています。ただ、それは所詮夢にすぎません。彼らは、テラスハウスでの非日常的な日常生活において「理想の自分」を演じ、「自分作り」をしているのです。現在の出演者は、菅谷哲也(消防士志望→俳優志望)、今井洋介(写真家)、永谷真絵(ミュージシャン)、小貫智恵(成城大学4年生)、島一平(お笑い芸人)、島袋聖南(モデル)の6人――あいのりとは違って、それぞれが現在進行形の「自分の夢」を持っています。

 また、あいのりメンバーのブログが、番組終了後に人気になったのに対して、テラスハウスのメンバーたちは放送と同時に、世間での知名度を上げています。たとえば、グラビアアイドルの「みーこ」こと筧美和子さんはめざましテレビのレポーターになりましたし、島袋聖南さんは、GirlsAward 2012 AUTUMN/WINTERというファッションショーに出演しています。彼らは番組を通して理想の自分の姿を真実のものへと変えている真っ最中なのです。視聴者の反応もあいのりよりリアルタイム性が強く、番組内でメンバーがTwitterの反応を見たり、エゴサをする様子がよく映されていました。

 このように、あいのりとテラスハウスはメンバーの目指すゴールが異なります――「本当の自分を見つけること」から「自分を本物にすること」へと変わったのです。では、「あいのり」と「テラスハウス」の間で、何が変化したのでしょうか。

 

理由その1 ネットのせいで、キャラを持つようになった

 テラスハウスに住むメンバーは、「“どこにでもいそう”だけど“手の届かない”」をコンセプトに集められています。そんな彼らが持つちょっと個性的な夢は、人に「キャラ」を与えることに通じていました。

 

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このコンセプトは公式HPでも大々的に書かれています(公式HPより)

 

 例えば、私が一番おすすめしたいメンバーに、島袋聖南さんがいます。彼女の職業ははモデルで、いつか海外のショーに出ることを夢見ています。彼女は話すときに目をぐわっと見開いたり、しょっちゅう髪をかき上げたり、外国人のようなリアクションを取ったり――とにかく演出が過剰で、番組内でも「鼻につく」とコメントされています。やり過ぎ感はいなめませんが、視聴者の目を飽きさせないという点で彼女はテラスハウスで最高のプレイヤーだと思います。

 他にも、今井洋介さんがネットで話題に上がっていました。本人のTwitter(@ImaiYosukeArtによると、職業は”アーティスト(photographer, musician, drifter)”だそうです。TwitterIDをよく見ると、こんなところにまで「Art」の単語が入っています。すごい。彼は、住岡梨奈さんに告白するとき、自作の曲をプレゼントしていました。雑誌の白黒ページや2chまとめなんかでよく見ていた「自作の曲プレゼント男」がこの世に本当に存在するなんて。

 

 

 このように、彼らはみんな個性的な「キャラ」を持って、視聴者の心を揺さぶってきます。同じように、我々の住む社会でも、多くの人がSNSで自分のアカウントを持つ時代になり、人はネット上で「自分のキャラ」を作るようになりました。Twitterで「人との出会いが大好きです/ゆるふわ系女子/海外留学……」と自分を名乗る人もいれば、ネタツイッタラーとして10000人近いフォロワーを抱えている人もいます。instagramにおしゃれなカフェの写真を載せたり、Facebookで自分の活動を記録することで、自分が何者であるかをアピールし続けています。

 テラスハウスメンバーのおしゃれな言動(笑)も、この現象と同じように見えます。理想の自分を演じることは、自分の「キャラ」と認識されるのです。

 

理由その2 合法的に人間観察ができる

  この番組は、単に、6人の日常生活をだらだらと放送するだけではありません。スタジオメンバーが適宜ツッコミを入れる形になっています。タレントのYOUさんが、番組の冒頭で簡単にコメントする形式から、スタジオメンバーの数人が、感想を言いあうようになりました。視聴者とスタジオが一緒になって、メンバーを観察する構造をしています。この人間観察の快楽も、魅力の一つです。

 

テラスハウスのスタジオメンバーが、感想を言い合っている様子。

 

 人間観察といえば、みなさんもTwitterを見ながら、「あれっ、この子いま誰とデートしているんだろう?」「あ〜〜〜この子彼氏と別れたばっかりだから、こんなツイートして他の男の人から声掛けてもらうの待機してるんだな〜〜〜」などと、人の日常を想像したことはありますよね。人間観察とは、相手のキャラを把握した上で、人の日常を想像する作業です。ツイートから相手の意図を考えたり、デート中っぽい写真を見て、つじつまを合わせていくことに私は快楽を感じます。

 そして、この快楽は、テラスハウスにも通じています。メンバーが好意を寄せる相手は、視聴者と他メンバーの思った通りなんです。はっきり言って、想像の範囲内です。でも、だからこそ、個性的でわかりやすい「キャラ」を把握した上で、その人の恋愛を観察するのは、答え合わせをしているようでとても楽しいです。ちなみに、あいのりほどではないにせよ、テラスハウスでも、恋愛が番組の切り口となることが多いです。それは、恋愛が「人間性」をわかりやすく表象させるからでしょう。ここでいう「人間性」とは「キャラ」にほど近いものです。

 また、この人間観察はメンバー同士でも行われます。衝撃的だったのが、「まいまい」こと永谷真絵さんにまつわる話です。共同生活を続けるうちに、まいまいは「テレビで注目されるために、好きでもないメンバーに『好意を持っている』と演技してるのではないか」とメンバーに疑いをかけられるようになってしまったのです。小学生の学級会のような、まいまいdis会議が開かれていました。「ちょっとちょっと! 中学生かよ! 大人にもなって何言ってるの!」とツッコミたくなりました。

 このような人間観察のおかげで、番組はかつてない盛り上がりを見せました。今や人は人間観察でしかつながれないのではないか、とすら感じてしまう瞬間でした。個性の強い人間を一つの場所に集めて、共通の目標をもたせずだらだら一緒に生活させる――その結果起こるのは、お互いのキャラを確かめ合う人間性消費でした。

 

別にやらせでもいいじゃん

  SNSが普及して以降、自分に対するレスポンスがいつでも得られるようになりました。本物の自分になるために、「キャラ」と「人間観察」は重要性を増してきたと思います。インテリのみなさん。それでもテラスハウス、見たくないですか? 気持ちはわかります。だってやらせかもしれないですもんね。でも、やらせだっていいじゃないですか。

  彼らが醸し出す「おしゃれっぽさ」は、始まった当初は、たしかに偽物でしょう。おしゃれなシェアハウスは番組が提供しているものだし、立派な仕事も出演してから増えていることが多いです。彼らが出かけたお店は番組HPでまとめられているので、ライフスタイルすら、テレビ局が決めているものかもしれません。しかし、虚構であることに何か問題があるでしょうか。「理想の自分」が、テラスハウスを通して真実の姿になっていく姿を見るのは楽しいですよ。ネットウォッチが好きなら、テラスハウスも楽しめると思います。

 

(了) 

 

※注:てっちゃんこと菅谷哲也さんだけは、番組内でステージが自分探しから自分作りに移行したように思えます。それゆえに、消防士の夢が破れた後突然俳優を目指したあたりは視聴者を心配させたのですが……。少し気が弱くて真面目なキャラは、演出ではなく、素っぽかったです。現在では、テラスハウスの風に当てられたのか、「それっぽい」夢追い人になりました。今後まいまいとの関係がどう進展するのか楽しみです。そして完璧に蛇足ですが、私はまいまいの味方でいたいと思います。

 

 

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