3/1に国立代々木競技場第一体育館で、「東京ガールズコレクション’14 SPRING/SUMMER」というファッションショーが開催されます。

 

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公式HPより)

 

 ファッションショーというと、スラっと痩せたきれいなお姉さんたちが、イケイケの服を着て歩くだけだと思い込んでいるおじさんも多いのではないだろうか。もう本当に……何も分かってないですね!

 まずはじめに、東京ガールズコレクションは、単なるファッションショーではない。ファッションブランドの発表だけでなく、きゃりーぱみゅぱみゅを筆頭に、アーティストたちがステージで歌ったりもする。ショーステージで流行りの音楽が大音量で流れる傍ら、ヘアサロンやネイルサロンなどの展示もあって、まるでライブイベントのような盛り上がりが見られる。ファッション好きの女の子たちが何万人と集まっている「お祭り」のようなショーだ。

 今回は世界の一般的なファッションショーと対比して、東京ガールズコレクションの魅力に迫る。ファッションショーではないファッションショーとはどういうことか。女の子たちが目を輝かせる「憧れ」のステージは、どう作られているのだろうか――その謎を紐解いていきたい。

 

ファッションショーの歴史をさかのぼろう

 そもそもファッションショーといえば、一般的にモデルがブランドの服を着て音楽に合わせて歩くものを想像するだろう。

 このようなファッションショーの基本的な形式は、19世紀後半にチャールズ・ワース(シャルル・フレデリック・ウォルト)が生み出したもので、当時はオートクチュール(高級仕立服)のショーで、選ばれた顧客のためだけに執り行われていた。このようなファッションショーが、初めて大々的に行われたのは、第二次世界大戦以降のプレタポルテ(高級既製服)のファッションショーだと考えられている。

 それまでは限られた顧客向けのショーだったのだが、次第に、メディアも招待されるものへと変わったことがきっかけとなって、ファッションは変わる――ファッションショーのおかげで、流行の規模が世界中にまで敷衍するようになったのだ。ちなみに、現在は「ファッションウィーク」というショーがこの形式を踏襲しており、かつてより大々的な演出で、開催される都市も世界規模となっている。これが、ファッションショーの簡単な歴史だ。

 

日本における二つのファッションショー

 さて、日本には二つ大きなファッションショーがある。ひとつは、メルセデスベンツファッションウィーク(旧JFW)(以下、MBFWT)で、もう一つが東京ガールズコレクション(以下、TGC)である。

 MBFWTは、海外のファッションショーや世界5大ファッションショーと同様に、一週間ほどの開催期間を設けており、全部で36ブランドの発表がある。ブランドごとに開催会場が分かれていることも特徴だ。ブランドの今後を知るためのステージとなっている。

 それに対して、TGCは全く構成が違ってくる。6時間程度で17ブランドの発表をするにとどまり、ファッションショーのステージの他に、企業ブースがいくつも用意されているのだ。ジルスチュアート ビューティーの新作フレグランスを試せたこともあった。ネイルサロンやメイクを試せるブース、流行りのお菓子やファッションブランドなどが展示されている。彼女たちは、流行りのファッションを見るだけでなく、今流行りのモデルやアーティスト、アイドルを見て、流行りの音楽やコスメを確かめている。TGCはただのファッションショーではない。憧れのライフスタイルを共有する場所となっているのだ。TGCは、「私たち」のステージなのである。

 

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 2013年の東京ガールズコレクションの「PRiSiLA」というウィッグのブースのレポート!

 

 観客は自由に会場内を移動することができて、ステージとブースの両方を楽しむことができる。大音量で流行りの音楽が流れる中を、みんなの憧れのモデルたちが颯爽と歩いて行く一方で、ヘアメイクをされている観客もいるわけだ。そして、最前列(フロントロー)はスタンディング席になっているのもTGCでしか見られない構成である。花道やスクリーンは、熱烈なファンたちが遠くからでも見えるように配慮されており、アーティストのライブやMISSTGCといったコンテストなど、様々なプログラムを組み込んだ。あらゆる点で、一般的なファッションショーとは一線を画する。

 

 

TGCの観客は、「誰でもない女の子たち」

 TGCが他のファッションショーと異なるのは、ステージングだけではない。来場者にも注目したい。

 MBFWTなどのファッションショーの来場者は、主にブランドにとって重要な顧客=スーパーセレブや著名人、メディア関係者、バイヤーとなる。たしかにTGCも、メディアや広告関係者などはvip待遇で招待されているが、多くの著名人たちは、「出演者」としてステージにあがっているのだ。TGCでは、女優、モデル、読者モデルといった、メディア露出をしている女性著名人のほとんどが、観客の立場ではなくなる。ここが、一般のファッションショーと最も異なる点だ――TGCは、観客がステージに上がることができる場所なのだ。

 このようなキャスティングは、他のファッションショーではありえない。多くのファッションショーに登場するモデルたちはショーが終わってからファッション誌などで公表されて、知名度を上げていくのに対して、TGCは事前に出演者が公表されている。ブランドの服を見に行くだけでなく、人気モデルたちを見に行くという客層もかなり多く、モデルの登場と同時に上がる歓声は、それをよく示しているだろう。ただのファッションショーでは味わえない体験が、そこにはある。

 また、TGCの来場者数からも分かることが多い。去年の「第17回 東京ガールズコレクション2013 AUTUMN/WINTER」の来場者数は、33500人であった(実行委員会の発表より)。いわゆるファッションショーは、最大でも300人程度しか集めないことを考えると、これは膨大な数字と言えるだろう。TGCの観客は「誰でもない女の子たち」である。彼女たちにとって、TGCは「みんなが憧れるモデルの登竜門」として機能しているのだ。

 さらに重要なのは、ステージにあがった”読者”モデルが、CROOZブログで人気だったことがきっかけだったりするように、ステージが観客の手の届く”かもしれない”存在としてあることだろう。観客にいるはずの女の子たちがステージに上がることは、「もしかしたら、自分もあそこに行けるかもしれない」という憧れを生み出す。実際にCROOZブログを見ると、こぞって読者数を増やし、自分のカワイイライフスタイルをつづるユーザーたちが多く存在しているのが分かる。彼女たちは、「いつか私もステージに」とTGCに足を運んでいるに違いない。

 

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CROOZとTGCがタイアップしてモデルを輩出している。実は、有名モデルの菜々緒もCROOZ出身だ。

 

 “普通の”ファッションショーは管理された顧客リストやプレスリストを元にコントロールされた状態で行われるものだ。そこには憧れは介入しない。そこにはスターもアイドルもミューズもいない。観客である「女の子」がステージに上がれるのは、おそらくTGCだけなのだ。

 

あなたがあのステージに立つ日が

 では、なぜTGCは、観客をステージに上げることができのだろうか。今の段階では、日本だから、という暫定的な答えしか出すことができない。日本の文化は、海外に比べても特徴的だ。内需依存によって独自の文化を練り上げているため、他国のファッションウィークと、あるいはそれに付随する流行や産業構造に足並みをそろえる必要がなかったのではないか――と僕は仮説を立てている。実際に、先進国ファッション企業で、日本ほど内需に依存しているケースは少ない。

  ちなみに、昨年のTGCには、ニコニコ動画で人気を博した踊り手の「仮面ライアー217」が出演した。彼女は、読者モデルでもなく有名ショップ店員でもなく、大手メディアで活躍する芸能人でもない。ネット発の「誰でもない女の子」が、TGCというステージに上がったことは覚えておくべき徴候だろう。「踊り手」は、多くの女の子たちが憧れるライフスタイルの一つに認められたのだ。ただのユーザーとしてネットで発信し続けた女の子が、憧れの対象としてステージにあがった――もしかしたら今画面を見つめるあなたも、観客席で目を輝かせるあなたも、あの舞台に立つ日が来るかもしれない。

(了)

 

注:この文章を書くにあたって、山田佳子氏の『東京ガールズコレクションの経済学』を参考にさせて頂いた。

 

東京ガールズコレクションの経済学 (中公新書ラクレ)

 

実際に数字を扱うよりも、戦略論やマーケティング理論、特に女性服におけるセグメントを中心とした内容だったが、面白い内容だった。2011年発刊だが、TGCに参画する企業の戦略を知る事が出来る内容だと言える。しかし、TGCというイベントそのものへの切り込みにはやや不満が残る内容である、とも言えるのだが、企業が運営するイベントである以上外部の人間にはその内実というのはなかなか知る事が出来ない以上仕方がないとも言える。「ガールズマーケット」という経済圏を再度考えるきっかけとして頂ければと思う。

また、TGCの熱狂については、社会学者の古市氏が再魔術化概念を用いて解説しているのだが、古市氏の分析はおおむね正しいように思う。社会学的な知見が必要とされるので、本稿ではその解釈などについて細かく行わないが、会場の構成やその仕組みと仕掛人についての調査などが行われており、とても面白い文章となっているためぜひともご覧いただきたい。

G2|第三回 東京ガールズコレクション始まる(リンク先要登録)

 

 

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田村 柑橘

田村 柑橘

はい!オフ会では「思ったより普通の人」!
みんなの笑顔が大好きな17歳!
ねとぽよのファッション担当、柑橘こと田村柑橘です!
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