全15曲ある「カゲロウプロジェクト」の動画総再生数は、ニコニコ動画上で3000万回を超え、爆発的人気となっています。現在、TOKYO MX系列から放送中のアニ メ『メカクシティアクターズ』は、この楽曲群が原作です。今回は、カゲプロの楽曲を 「歌って演じてみた」動画がきっかけで人気となった、ゆめこさんにインタビューさせていただきました。

彼女の動画は、ただの「歌ってみた」ではありません。ゆめこさんが”1人”で、何人ものキャラの声を使い分けながら、曲中にセリフを入れるアレンジを加えています。

 


歌ってみたカテゴリで最高4位を記録。再生数は47万回越え(2014/5/30時点)

 

どうしてこんなにカゲプロが流行っているのか分からないと感じている人や、「演じてみた」って原曲じゃないし……と思っている人こそ、ゆめこさんの曲を聴いてみてください。設定を知らなくても、感情移入しやすいように組み込まれたセリフや演技のおかげで、一つの物語として聴けるはずです。「歌ってみた」で演技をすることは、まるで”なりきり”や”Sound Horizon”のような面白さもあります。ゆめこさんにしかできない、新しいniconicoの創作に迫っていきたいと思います。

批判も多いネット時代、しかもニコニコ動画という場所で、あえて「歌って演じてみた」を選んだのはなぜだったのでしょうか。どうしてカゲプロを歌い始めたのか。 そもそも、なぜ演技が上手いのか――。そんな謎を探るべく、歌い手を始めてからの6年間を振り返りながら、ゆめこさんの素顔に迫っていきたいと思います。

 

「歌ってみた」ではなく、「歌って演じてみた」

――「最近オススメの歌い手はだれ?」と聞くと、ゆめこさんの名前がよく出てくるんです。

 

 そうなんですか、嬉しいです。2008年から、マイペースに好きな曲を歌ってたんですけど、カゲプロの楽曲に惚れ込んで歌うようになって、コメントやイラストをいただく機会が一気に増えましたね。1年前は400人くらいだったTwitterのフォロワー数も7000人を超えてたり、動画のお気に入り通知が、1日100件近くくるようになったりしたんです。それまでは、マイリスト自体が27件で止まってたくらいなのに(笑)。あとで振り返るまで気がつかないくらい、夢中になって投稿してましたね。

 

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ゆめこさんの誕生日に寄せられたイラスト

 

 実は、初めてカゲプロの動画を投稿したときは不安だったんです。というのも、歌だけじゃなくて、キャラのセリフも入れているから、ただの「歌ってみた」じゃないんです。「歌って演じてみた」なんですよね。歌い手の解釈が入ると抵抗がある方も多いと思うので、「叩かれるかなあ……」と緊張してました。

 

――投稿してからの反応はどうでしたか?

 

 それが、「鳥肌」「泣いた」「感動した」とか、思ってたよりいいコメントが多くて驚きました。「ゆめこさんの歌でカゲプロにハマりました」「今まで歌で泣いたことなかったけど、ゆめこさんの曲を聴いて初めて泣きました」とコメントを頂いたときは嬉しかったです。そのおかげで、構成を考えるのも楽しくなって、 次はこうしようとやっているうちに、「歌って演じてみた」を中心にあげるようになりました。

 いろんなキャラを演じるので、「多声類」というタグがついたり、「どれが地声なの?」と聞かれたりしたこともあります。「男なんですか?」とか(笑)。

 

女の子っぽい普段の声と一転して、”黒コノハ”の声は男らしく低音

 

ゆめこさんってどんな人?

――まずは、ゆめこさんがどんな人なのか聞いていきたいと思います。ニコニコ動画を知ったのは、いつ頃でしたか?

 

 2007年頃です。YouTube の「忙しい人向けシリーズ」のネタ動画で知って、 Sound Horizon の動画をよく見てました。初めて「歌ってみた」で投稿した曲も、サンホラだったんです。友達と教室で合唱していたら、クラスの子たちからの評判がよかったんです。それで、その子と一緒に「『歌ってみた』をあげてみようか」となったんですよね。

 


ゆめこ「『沈んだ歌姫』は2曲目の投稿です。1曲目は黒歴史すぎて消しました(笑)」

 

――当時は学生だったんですよね。機材を準備するだけでも大変だったのでは?

 

 2000円のマイクと、2000円のヘッドフォンで録音しました(笑)。あの頃はミックスが必要だということすら知らなかったから、音質がヤバいですね。そのへんは近所のお兄さんとか、ネットで仲良くなった友達から教えてもらいました。

 

――そのときは”ゆめこ”という名前ではなく、”はと”さんとして歌っていたんですよね。

 

 そうです。一緒に歌っていた友達が「”鴉”って名前にする」 と中二病を発揮したので、「じゃあ、私は平和の象徴の”はと”にする」と名づけました(笑)。 当時連載されていたCLAMP さんの『こばと。』という作品が好きだったこともあって、即決でしたね。

 名前を変えたのは、ずっと飼っていた”ゆめ”という犬が、天国にいってしまったからなんです。『ヘッドフォンアクター』を録ってたときに倒れてしまって、すぐに気づいてあげられなかったんです。それが心残りで、しばらく音楽を聴くのも嫌だった時期がありました。でも、録音してあった『ヘッドフォンアクター』をふと聴き直したら、”ゆめ”が生きてたときの”はと”の声が流れてくるわけです。それを聴いていると、やっぱりカゲプロが好きだし、何よりも歌うことが大好きで”ゆめ”のいた最後の時間を形にしておきたいなと思ったんですよね。この曲を一つの区切りにしようと思って、『ロスタイムメモリー』からは”ゆめこ”に変えたんです。

 

 

――その『ロスタイムメモリー』が25万再生(2014/5/30時点)を越えたときは、どう思いましたか?

 

 じわじわと伸びていって、驚きました。ゆめが天国から見てくれているみたいです。ゆめこになってから録った曲は、どれも自分の世界観を広げてくれたなと思いますね。

 たとえば、『夜咄ディセイブ』は今まで私の中にあまりなかったリズムで、音程を取るのが大変だったんです。歌録りだけで、2,3ヶ月もかかったんですよ。

『アウターサイエンス』は、初めてゲスっぽい役を演じました。はじめまして、私のゲスボ(笑)。今まではきれいな歌を中心に選んでいたので、正直、どうなるか不安だったんですよね。「ちょっと怖い」や「ゲスイ」などのコメントは、普段なかなか見られないので新鮮でしたね。やるなら思いっきりやろうと思っていたので、すごく嬉しかったです。この歌に関しては、「キモイ」も褒め言葉だと思っています(笑)。

 

――ゆめこさんの特徴って、声が変わることだと思うんです。『サマータイムレコード』は、メカクシ団の9人が歌ってるみたいに声が変わって、びっくりしました。「ゆめこさんに声優をやってほしい!」というコメントが流れていたのを見たことがあります。

 

 まさにその通りで、小学生の頃からずっと声優になりたいと思ってたんですよ。『ワンピース』のルフィーの声優をやっている田中真弓さんに影響されたんですよね。高校は演劇系に進んで芝居をしたり、大学も演技の勉強はしてました。声優事務所に受かったこともあったんですけどね。今は自分のしたいことを考えながら、ちょっと進路に迷ってるところです(笑)。

 

――それで、1人で歌ってるとは思えないくらい、使い分けが上手いんですね。セリフはどうやって考えるんですか?

 

 完全に、私の妄想です(笑)。カゲプロを知らない人も感情移入ができて、その物語に入り込めるようなセリフにしようと考えてますね。『アヤノの幸福理論』は分かりやすいです。2番から歌詞が急展開して、アヤノが追い込まれていくところが、より悲しくなるように、前半はあえて幸せで楽しかった日常の雰囲気を強く出しました。逆に、 後半は「なんでこんなことになってしまったんだ」という展開にしています。

『サマータイムレコード』の間奏前半は、コノハが辛い思い出を振り返る感じにしようと思ったんです。黒コノハの「これが定めなんだよ」から始まるんです。助けたくても助けられなか ったヒビヤとヒヨリの声や、遥だった頃に発作で倒れたときに聞こえた、「死んじゃやだよ」 と言う貴音のセリフも入れました。2番からは、メカクシ団のみんなとの日常のシーンになるので、だんだん暖かく懐かしい雰囲気にしていきたかったんです。コノハがソファーで寝ちゃうシーンが小説にあったので、それを参考にセリフを入れてます。メカクシ団のコノハとして、毎日が楽しくなってきた感じにしました。ここは、全部コノハに向かってかけられたセリフにしました。

 

 

――あえて、「演じてみた」にした理由はなんですか?

 

 動画の絵の口元がぱくぱく動いていて、ついキャラの声を当てたくなっちゃったんですよね(笑)。初めはちょっとしたお遊びでセリフを録ったんですけど、これが案外しっくりきたので、やってみたんです。

 でも、「演じてみた」だから、キャラが言いそうなセリフを入れるだけじゃない。ちゃんと意味のあるセリフを入れたいというこだわりがあるんです。曲がまずあって、その世界観を広げるにどうしたらいいか。誰に向かって、どんなとき、どんな声色でどんな言葉がほしいか。そんなことを考えながら、妄想してます。曲を聴いてほしいので、初めて聴く人たちにちゃんと伝わるか、耳あたりがいいかなどをチェックして変えてますね。

 

――そもそも、カゲプロにハマったきっかけは?

 

 初めて聴いたのは、友達がカラオケで『カゲロウデイズ』を歌ってたときでした。普段あまり聴かない曲調と歌詞だったので、ただ圧倒されちゃったんですよね。その子が 『コノハの世界事情』も歌ってたんですけど、「こんなテンポの速い曲、人間が歌えるんだ」と驚いたくらいです。まさか、自分が歌うようになるとは思ってませんでしたね。

 その頃、別の友人から「『空想フォレスト』歌ってみて」とお願いされて、聴いてみてハマりました。今まで好きだった曲の雰囲気と近かったので入りやすかったのもあると思うんですけど、聴いているうちに PV に隠された謎が気になってきたんですよ(笑)。一体マリーは何者なのか、この PV に出てくる男の子は誰なのか――それを知りたくて、他の楽曲を聴いたり、『カゲロウデイズ』の小説やマンガも読むようになりました。

 

――カゲプロが爆発的人気になったのは何が魅力だったと思いますか?

 

 まずは、じん(自然の敵P)さんの作る曲ですよね。曲調も歌詞も、全部別人が書いてるのかと思うくらいバリエーションが豊富でしょう。私はバラードが好きなので、『シニガミレコード』『群青レイン』『アヤノの幸福理論』とかが好きだったけど、そこから他の曲にも興味を持たせてくれるストーリー性があるんです。隠された設定が多いから、どんどん調べたくなるのも、ヒットの理由だと思います。個人的にはサンホラみたいに、ストーリーのある曲が好きなのでハマったんだと思います。

 若い子たちに刺さるストーリーであることも、魅力かなと思います。私が歌い手を始めた頃に比べて、ニコ動を見る世代が若くなってきてるので。あと、カゲプロのキャラ たちは、16〜18 歳の子が多くて、その子たちと年齢も近いからヒットしてるのかも。 自分が中学生だったら、絶対カゲプロのキャラにガチ恋してると思います(笑)。

 個人的には、キャラたちの性格が人間性に溢れていてリアルで、どことなく自分を重 ねてしまうんですよね。小説を読んでると、まるで自分を見ているようで……。「そこ触れないで!」みたいな(笑)。そんな彼らが悩みながら、みんなで解決しようと手を取り合う様子や、「一人ぼっちじゃない」というフレーズには、勇気をもらいますね。 油断してるとつい泣きそうになるんですよ。

 ……こんなこと言ってると友達いないと思われるかもしれないですが、仲の良い友達はちゃんといます。ご安心を(笑)。

 

演技と歌で、私にしかできない空間を作りたい

――歌い手をやっていて、楽しかったことは?

 

 友達の輪が広がったことですね。この業界では長い間ぼっちだったんですけど、 Twitterで仲良くなった歌い手さんに誘われて、去年の8月に初めてのライブに出演させていただいたりもしました。最近も月1回くらいのペースで、ライブをやってます。歌で人を驚かせるのが好きなので、お客さんが、曲の終盤で鼻をすすっている音を聞くと、「よっしゃ!」となります(笑)。

 あとは、ミックスしてくれたり動画を合わせてくれる友人たちと、原曲を作ったボカロP さんや動画師さんがいて、初めてみなさんの耳に届くんだな、ってよく思うんですよね。ミックスの作業って、本当に大事なんです。録音だけだと全然パッとしないんですよ。感謝しています。

 

――歌い手として、今後やっていきたいことを教えてください。

 

「歌って演じてみた」は、今まで通り続けていきたいのと、ライブ活動には積極的に参加したいですね。せっかく生の舞台なので、録音ではできないようなことをしたいと思ってるんです。もともと芝居が好きだから、私の歌って、歌よりは語りに近い気がしてるんです。だから、いつか演技をしたり歌ったりしながら、私にしか作れないような空間を作ってみたいですね。

 あといつか、じん(自然の敵P)さんと同じステージに立ちたいです! じん(自然の敵P)さんのライブ「ライブ・イン・メカクシティ SUMMER’13」にも行きました。 憧れすぎて、もう夢ですね(笑)。

 カゲプロを知らなかったら、ここまでアップテンポを歌ってなかったなあと思うし、 気の合うお友達にもたくさん会えたし、自分の世界が本当に広がったと思います。これ からも、”ゆめこ”として、みなさんに楽しんでもらえるように、いろんな曲を歌っていきたいです。 

 

ゆめこさん、お誕生日おめでとうございます!

 

 

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